REPORT

【もっと身近なクラブカルチャー】vol.4 SUNNY SUNDAY SMILE

連載『もっと身近なクラブカルチャー』第4回は、京都 CLUB METRO を拠点に9周年を迎えたインディー / オルタナティブDJイベント SUNNY SUNDAY SMILE(以下:サニサン)の一夜をレポート。「クラブってどんな感じなんだろう?な」と思っているあなたに向けて、2020年10月10日(土)のサニサンを媒介にクラブの一夜を書き記せたらと思います。夜な夜なグッドフィーリングを探し歩くライター阿部と、今回ほぼクラブ初体験だったイラストレーター橋本ゆいかの目を通した、一夜の物語をどうぞ!

SUNNY SUNDAY SMILE

日時

隔月いずれかの土曜日
21:00〜4:30
※回によって変更あり。

会場

CLUB METRO
京都市左京区川端丸太町下ル下堤町82 恵美須ビル B1F

出演

DJs
OHNO SHINSUKE、IWASAKI SHIN、SAKAMOTO SATOSHI

AVE、YAS(2021年より新加入)

 

VJs
FJOK、DAISUKE

料金

前売り ¥1,500 / 当日 ¥2,000 (+1ドリンク代別途)
※回によって変更あり。
※現在は予約必須。詳細はCLUB METROのWebサイトにて。

Twitter

https://twitter.com/sunnysundaysmil

Instagram

https://www.instagram.com/sunnysundaysmilekyoto/

すべての夜のすべての瞬間が最高なわけではなく、「今日はイマイチだった」なんて思うこともある。でもそんな夜も含めて同じ夜はひとつとしてなく、その数回、年間、或いは人生単位でおおらかにクラブカルチャーに触れていることが僕を少しだけ豊かにしている。そんな気がする。とはいえこの夜は総じていい雰囲気のフロアだった。後日会った友人が「何も覚えてないけどめっちゃよかったねー!」なんて言っていたが、ディテールは思い出せなくても楽しかった感覚だけが残っている、多分それが最高の夜だ。

 

ぶり返してきたコロナの猛威で京都や大阪も自粛要請、なんの気兼ねもなくナイトライフを満喫できる日はもう少し先になるかもしれない。でもだからこそ、日常とフェスのような非日常空間の狭間に確かに存在する、かけがえのない音楽体験の場をイメージしてほしい。

さり気なくも着実に立ち上げる、縁の下のオープニングDJs

サニサンは主催の OHNO SHINSUKE の地元大分にルーツを持ち、京都CLUB METROに根城を移して9周年を迎えたDJパーティー。往年の名曲から最新の話題曲まで洋の東西を問わず幅広く流れる中でも、レコードでのプレイにこだわった硬派で偏愛に溢れたDJが特徴。ジャンルを超えたアティチュードとしてのインディー / オルタナティブ精神が立ち現れているのが魅力的なパーティーだ。そしてthe twentiesをはじめとしたゲストアクトとともにこのパーティーを積み上げてきたこともあり、往年のファンだけでなく若い層も入り乱れて、幅広い層が混在しているのも特徴的。さて、この日はどんな夜になるだろうか。

CLUB METRO。京阪・神宮丸太町駅で降りて2番出口に向かうと地上との踊り場に入り口が現れる。筆者の僕はもっぱら阪急河原町駅から鴨川沿いを北上して向かうことが多いが、はじめて来た人はユニークな立地に驚かされることは間違いない。

この日のサニサンは4DJs+バンドの布陣で、レジデントDJの OHNO SHINSUKE と IWASAKI SHIN 、MVなどを駆使して空間をコラージュするVJに FJOK と DAISUKE とおなじみの面々。そこにゲストDJ、大阪のパーティー FREE AGAIN の YAS と神戸のパーティー UNKNOWN DISORDER の AVE が加わり京阪神をカバーするラインナップが出揃った( YAS と AVE は2021年からレジデントDJとして新加入予定。今思うとその前哨戦としてのフロアが見られたのがこの回だったのかもしれない)。そして、先程までここ METRO で第1部のワンマンライブをしていた the twenties も引き続き第2部のサニサンに登場するということで、フロアはライブの余韻とこれから始まる夜への期待で渦巻いていた。

 

僕が METRO に入った22時を少しまわった頃、真っ先に耳に飛び込んできたのはレジデントDJの IWASAKI SHIN がプレイする Vanpire Weekend “Harmony Hall” 。2019年のリリースから幾度となく朝方の祝祭ムードを彩ってきた印象のあるこの曲から僕の夜が始まるのがとてもフレッシュで、今夜への期待が掻き立てられる。続く YAS はドスンとしたキックを強調した Gorrillaz “Feel Good Inc.” や Kasabian “eez-eh” でフロアを混ぜ合わせ、オーディエンスもちらほらDJブースの方を向き始める。単なる前座ではない存在感を持ちながら続くバンドアクトを立てる絶妙な塩梅のコーディネートだ。

IWASAKI SHIN。DJのみ開催時はステージがDJブースだが、ライブ開催時はステージ向かって右手側がDJブースとなる。
DAISUKE(VJ、左)OHNO SHINSUKE(右)。DJの背後にあるスクリーンで、MVやライブ映像をコラージュしたVJとともに楽しめるのもサニサンの特徴。このご時世なので映像の密な様子に憧憬を感じたりもする。

引き継いだ OHNO SHINSUKE が繰り出すは Foals “In Degrees” 、Two Door Cinema Club “What You Know” 、The Strokes “Brooklyn Bridge to Chorus” とインディーロックへの偏愛の応酬。特に音源ではいまいちピンとこなかった The Strokes の新曲も、キラーチューンたちの流れでまるで往年の大アンセムのように聴こえてくるのも不思議なもの。こんな風に最新の楽曲がどのように響くか、どのように受け入れられているのか肌で感じられるのもDJパーティーの醍醐味だろう。期待感を十分に煽ったところでいよいよ the twenties の登場。いい流れじゃないか。

バンドの高揚を引き継ぎ在りし日を今ここに昇華するピークタイム

バンドとDJの兼ね合わせの難しさは多くのDJから耳にするところで、ともすればノリが完全に分断されてしまうことも想像に難くない。だが、かつて大分を盛り上げていたサニサンを京都の地で更新する OHNO SHINSUKE と、同郷から上洛して活躍を続ける盟友 the twenties の間には、そんな心配はいらなかったようだ。

 

破壊的なビートの重さで叩きつけるバンド然としたサウンドに頭を振る中でも、シンセサイザーのようにエレポップ風味なウルマヒロユキ(Gt)の音色が程よく溶け出すフロア。軽快なダンスポップからハードコアまで行き来するアニーダイナソー(Dr)と野菜くん(Ba)のリズム隊。そして日々の焦燥ごと混ぜ返しすべて昇華せんとするタカイリョウ(Gt, Vo)の歌声が METRO のフロアに響き渡る。今ここで終わってしまう切なさとこれから深まっていく夜への期待感がアンビバレントに入り交じる中で、ぶっきらぼうに煽るレジデントの面々。 アンコールでかき鳴らした The Killers “Mr. Brightside” のカバーは、彼らとサニサンのインディーロックへの愛を確かめ合うような絆を感じたものだ。余韻ごと舞台は再び IWASAKI SHIN へ引き継がれていく。

the twenties
the twentiesとオーディエンス

間髪入れずに流れてきたのは The 1975 “If You’re Too Shy (Let Me Know)” 。この曲が流れるフロアは失われ、ヘッドライナーを担うはずだった『SUPERSONIC』もなくなってしまった2020年。そんな悔しい思いを塗り替えるような流れに思わず唸ってしまう。話題のコラボ CHAI & HINDS “UNITED GIRLS ROCK’N’ROLL CLUB” のキュートでどことなくキッチュな質感を MIKA “Lollipop” が拡張し、広末涼子 “MajiでKoiする5秒前” のモータウンビートを引き継ぎフロアが華やぐプリンセス プリンセス “DIAMONDS”。古今東西無数に広がるポップフィールドからこの夜のグッドフィーリングを編み出すDJプレイの妙。そして再びの The 1975 は “Me & You Together Song”。在りし日への郷愁をこの上なく純粋に現代に鳴らすこの曲に揺れながら、フロアに流れる精神もきっと同じなんだろうなと感じていた。

 

そして現代モードを受け継ぐ AVE は、程よくサイケ風味な Hinds “Good Bad Times” から往年のアンセム Grouplove “Tongue Tied” のどこか倦怠感も交えた刹那的なきらめきでフロアを賑やかす。Dream Wife “Sports!”、The Hives“ Tick Tick Boom” と徐々に泥臭くソリッドになっていくサウンド。極めつけは本家 The 1975 の映像をバックにした SWMRS feat. FIDLARの “People” からの Green Day “American Idiot” だろう。イギリスから “人々” の自覚を促す最新鋭のレベルと、半ばやけっぱちのようにアメリカを憂う00sパンク。加熱を見せた大統領選挙を意識したかはわからないが、場所も時代も違えど並べ方ひとつでそれとなく思想が浮かび上がってくる。

AVE(UNKNOWN DISORDER)

シームレスに続く OHNO SHINSUKE の Jimmy Eat World “Sweetness” の高らかな叫びから、2020年のイギリスを席巻する Sports Team “M5”、2020年に急逝した Mac Miller “Knock Knock”、そして復活の話題がホットな大アンセム The Music “The People” と繰り出す流れはこの日の僕のハイライト。多分DJが掴み取っているのはジャンルとしての相似ではなく、もっと大枠の時代の空気や思想の流れなんじゃないか。ややこしいことは抜きにアガればそれでいいというのもまた真理だが、その裏で気づくか気づかないかくらいのニュアンスで心情の機微を織り交ぜる。これだからパーティーは奥が深いのだ。

いろんな思いが交わり様々な表情を見せるフロア

先程 “僕の” ハイライトと書いたが、集まった人の数だけ思い入れやその日の気分のグラデーションがあり、人の数だけハイライトがある。人によってはおもしろい流れが人によってはつまらない。DJはなんと難しいことをしているのだろうとよく思うが、時にそんなそれぞれバラバラな気持ちが高密度で合致するタイミングも訪れる。

 

夜も更けきった深夜の、Joy Division “Love Will Tear Us Apart”、The Cure “Friday I’m in Love” 、The Stone Roses “Elephant Stone” 。あるいは the twenties タカイもDJブースに乗り込んだ本家 The Killers “Mr. Brightside”、さすがに溜まってきた疲れもスパイスに夢見心地に揺れる Arcade Fire “Wake Up” や The Flaming Lips “Race For The Prize”。僕はどこでこの曲に出会ってどんな風に聴いてきたっけ?あなたはどう?そんなことは知らないし、多分ここに集った人の数だけ様々な思い出があるんだろう。昔から大好きな曲もはじめて聴いた曲もまるごと併せ飲んで、まるで僕の青春ごとここで塗り替えられていくような感覚が清々しい。

CLUB METRO

最終盤にかけてはシンガロングが起こるようなアンセムの応酬。とはいえこのコロナ禍で人数制限、常時マスク着用のフロアで叫んだりはしない節度は持ちつつも、それぞれ思い思いの時間が流れる。盛り上がっている人もいる中で、疲れでウトウトしている人や後方でだべっている人もいるが、一様に全員が盛り上がるフロアはなにか異様だし、こんな風にいろんな生態がごちゃまぜになったフロアがなんとも愛おしい。それぞれが無理なく気持ちよく過ごす、日常の延長としてのクラブ空間が流れている。

 

それにしたって Blur “Song 2”、Franz Ferdinand “Take Me Out ”、Oasis “Wonderwall” と続いてしまいには Radiohead “Creep” まで流れた時は、ひねくれ者の僕は「ベタ過ぎるだろ」なんて思ったりもしたものだが、今日のフロアは白けたりはせず不思議と心地が良い。それは多分長い自粛期間とあまり楽しめなかった夏、かなり久々に METRO に来たという人びとの、ウズウズした気持ちをDJ達が敏感に察知して、解き放たれる空間だったからなのだろう。タカイをはじめとした the twenties の面々も出演者としてだけではなく、いちオーディエンスとして楽しんでいる。何が良くて何が悪いという決まりもなく、その日集まった人々のコミュニケーションで作り上げていくのがクラブのフロアなのだとまざまざと感じたものだ。

FJOK(VJ、左)YAS(FREE AGAIN、右)

楽しい時間は終りが来るし、それぞれの日常にまた帰らなければいけない。必ずしも生活は楽しいものではないし、このコロナ禍の苦境はまだまだ先が見えない。それでも生活は続く。OHNO SHINSUKEが最後に流した Noah And The Whale “L.I.F.E.G.O.E.S.O.N. ” は、そんな気分をささやかながら力強く鼓舞しているようにも思えた。そう、この時間は何も特別な非日常体験なんかではなく、音楽とともに過ごすことで何か少しだけ気が楽になったり前向きになれる。クラブは僕にとってそんな場所なのだと改めて感じたサニサンの一夜だった。

 

本当になんの気兼ねもなくフロアに集まれる日はまだ先なのかもしれない。でも、様々な制限の中誰よりも自覚的にフロアの物語を紡ごうとするDJたちの姿。3月の緊急事態宣言直前の開催、世論も右往左往して気持ちも定まらないでいた中、サニサンのフロアで流れた、思い出野郎Aチーム “ダンスには間に合う” 。それから会えない日々は続いたが、思えばその時から僕はDJ達と集まったオーディエンスの紡ぐ物語に勇気づけられてきた。またここに集う日まで、ささやかながら毎日を生きていこう。そんな気持ちにさせてくれたのがサニサンであり、DJパーティーなのだ。

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