INTERVIEW

都市の文化にふれながらバランスよく生きられる場所が無い!!〈汽水空港〉店主・モリテツヤインタビュー

特集『文化の床』の企画「#無い!!」では、満たされているはずの都市や生活の中で「なにかが無い」ことに気がついた人々へインタビューし、どんな「無さ」に向き合っているのかを伺った。北九州で生まれ、ジャカルタで育ち、千葉の幕張で青春時代を送った〈汽水空港〉の店主モリテツヤさん。幼い頃から日本の社会人の画一的な生き方にうまく適合できないことをおそれ、また「お金を稼ぎ、物やサービスと交換する以外の生き方がなぜないのか?」と疑問に思ったという。

BOOKS 2020.12.24 Written By 堤 大樹

お店で出迎えていただいた時、モリさんは〈たみ〉の蛇谷さんから預かっている大きな白い秋田犬「おとうさん」を連れ、本当に嬉しそうに何度も話しかけていた。それを見て「邪気のない人だなあ」と感じたのがモリさんの第一印象。そして2時間弱お話をさせていただく中で、切実さはあるがそこに付随しがちな「毒っ気」をまったく感じなかったことに気がついたのは帰りの車の中である。だからこそ〈汽水空港〉に置かれている本はどれも昔なじみの近所のおばさんや親戚のおじさんのように気取らず、手に取りやすかったのかもしれない。

 

左官屋さんに弟子入りして3年かけて作ったという〈汽水空港〉や、誰しもが自由に出入りし農作物を収穫することができる〈食える公園〉など、モリさんの話はエピソードには事欠かないし、アナーキーな部分にばかり意識がいく。しかし、特筆すべきはそれでもなおいずれも多様なバックグラウンドの人を迎え入れる開かれた場となっていることではないか。

 

そこにはモリさんが社会の仕組みや規範をそのまま受け入れるだけでなく、文化と生活のよりよいバランスを追求するために自身が手を動かし続けているからこそ生まれた、普遍的な価値が土台にあるように思う。インタビューの最中、「自分の人生を自分でつくる」という言葉がさらりと出てくるあたりにそんな自負も感じたのだった。

東京で本屋と畑をやるならアスファルトをひっぺがすところからやらないといけない

──

まず、なぜ〈汽水空港〉を鳥取の湯梨浜町でオープンされたのか教えていただけますか?

モリテツヤ(以下:モリ)

鳥取はたまたま「安い空き家があるよ」という情報があってそれで来ただけなんです。鳥取はそういうエリアだらけ。余白しかないみたいな。自分としては都市部の文化はずっとふれ続けたいんだけど、畑だってやりたいし家だって建ててみたい。都市的な文化が蠢きながら、土にも近い暮らしがしたいと思った時にそれができる町を見つけられなくて、それを作りたいなと思ったんですよね。それで今ここで作ろうとしているって感じです。

──

東京や、地元である千葉でお店をオープンされることは考えなかったのでしょうか?

モリ

東京は文化が蠢いているなって感じたんですけど、じゃあ自分が東京で同じように文化的な場所をつくりたいかって言われると余白がないからちょっと違うなと。東京では人間が無理くり隙間に入り込んで、そこでどうにかこうにか生き延びようとする活動がいろんな文化を蠢かしている。関東へ住んでいたころ、僕は〈気流舎〉によく行くようになったんですけど、そこはカウンターカルチャー専門古書店と銘打っていて、ヒッピーカルチャーからずっと続く系譜の本とか、アナキストの思想の本とか、精神世界、ドラッグだとか幻覚植物だとかそういうものを扱う本がいっぱいありました。そういうことが好きな、この人たちどうやって生活してるんだろうみたいな人たちが蠢いていたんですよね。

 

その気流舎をきっかけにミニコミだとかZINEをなんでもかんでも扱う〈模索舎〉さんとか、昔からやってる本屋さんとか、新宿の〈IRA〉っていう パンクスとかアナキストのお店を知るようになって。実際、個人店の本屋さんの店主に「自分も本屋をやりたい」って言うと、「家賃めちゃくちゃ高いし、東京で儲かるわけがないからやめなさい」ってみんな同じことを言うんですよね。

──

自分たちでお店をやっているからこそ、言えることですよね。

モリ

そうなんです。自分は畑とかしながら本屋がやりたいけど、もし東京でそれをやろうとするんだったらアスファルトをひっぺがして、そこを土に戻してからしか自分のやりたいことがスタートできない。アスファルトをひっぺがすにもいろんな権力との戦いが必要で、それをオフィシャルに、真っ正面からいったらアスファルトを引っぺがすところで自分の人生が終わっちゃうなと。

 

それに、気がついたら僕も消費者としていろんな発信される文化を東京にただ享受しに行くだけみたいな感じでずっと過ごしていて。当然それを享受するにはに電車代とか、本を買うお金、 CDを買うお金が必要だったんです。

──

その後どういった経緯で地方には目が向いたんでしょうか?

モリ

自分は農業研修で埼玉とか栃木のだだっ広さを体感していたから、お金をかけずに広大な土地を自由に使えるというか、むしろ使って欲しいみたいな土地もあることに気がついたんですよね。そんな場所を見つけて、そこで作物を作れれば餓死はしないですよね。家賃に苦しめられることもなくなるし、そうすれば本が売れなくても生きていけるだろうと思って地方のほうに目が向き始めたんです。

自分で自分の生き方を作っていくと失敗も当然ある

──

地方で暮らすことに迷いや不安なかったですか?

モリ

当時、自分が22歳ぐらいの時に「畑をしながらどこかの地方で本屋をやりたい」って言うと、「完全に社会から遠くのところに行こうとしてるんだね」みたいな印象をみんな持っていて。どちらかしかないみたいな認識のされ方だったんですね。

 

僕も別に、仙人みたいな極端な暮らしがしたいってわけじゃなくて。ゴリラとかビーバーだって自分で巣をつくるし、そういう感じで人間もかつてはプロの大工じゃなくても自分で家を建ててきたわけじゃないですか。それに今でも料理人じゃなくたって料理はする。農業だってプロじゃなくてもやっていいはずです。そういうことをやろうとしたら、なんで今の社会とは全く別の外側へに行こうとしてるみたいな極端な受け止められ方しかできないんだろうと思って。両方のいいところを取りたい、ただバランスよく生きていたいってだけなんですよ、自分としては。

──

「社会から遠い所に行くんだね」という言葉はとても示唆的ですね。農業もですが、家を建てるということは自分には関係ない世界のこと、自分の世界とは接続していないという無意識があるとうことですよね。確かに自分も忘れがちかもしれません。

モリ

気づいたのは、自分の場合はお金を稼ぐ能力に自信がなかったことも大きいのかなと。高校時代からバイトを始めるけど、どのバイト先でも全然使い物にならなかったんですね。どうやら金を稼ぐことは自分には難しいと感じた時に、「なんでそもそも金が必要なんだろう」って考えて、そうなると真っ先に家賃とか食費のことを思い浮かべました。これって本当にお金と交換しないと手に入れられないものなのかなって。別に作れるよな、それをやったらいいよなって思ったんですよね。

 

でも実はそのくらい自分で作る、生産するってことが今の生活からは引き離されている。生活が細切れにされちゃってるなという印象ですよね。生きるってことは、お金を稼いでその稼いだお金となんらかを交換するってことじゃなくて、もっと自由なはずで、家を建てる自由、作物を作る自由、そして文化、音楽だったり芸術に触れて作る自由もある。そういった自由を自分は全部享受したい 。それが実現する町はどこにあるのか、ないなら作ろうみたいな感じですね。

──

僕たちは自分で自分のことを決めることを教育されていないですよね。それに僕たちはどのように気づき、身につけられるのかなと最近考えているのですがどう思いますか?

モリ

自分の場合は最初に適応できないという絶望があったんですよね。与えられた社会のルールとか、評価の軸に簡単に沿わせられる人間だったら沿わせていけばいいと思うんですよ。僕も自分がテストを頑張っていい大学行って、いい会社に入って、与えられた任務をこなして、それでやっていける人間だったら多分そのままいったんじゃないかなって思うんです。それができない人間はやっぱりどうやって生きていけばいいんだろうかって悩むし、絶望しちゃうんですよね。

──

声には出せていないけど、似たような感覚を持っている方は多そうですね。

モリ

『人類堆肥化計画』っていう本を書いた東千茅さんって人が最近好きで。東さんの本を読んだら、同じように絶望してたんですよね。僕と同じくらいの時期に台湾の日本人学校に行って、そこでこれまでとは異質な文化圏で数年暮らして日本に帰ってくると、日本の小学校や社会はルールが決められすぎていて幼稚さを感じたみたいで。そこから日本社会全体が求めてくる生き方のモデルに興味が失われて、暗黒の時代をずっと過ごしていたらしいんですよね。その後、ある畑に向かって土とか虫とか動物とか人間以外の生命体と交わる中で、それが自分にとっての喜びだと気づいて吹っ切れたらしいんですけど。

 

東さんも絶望の果てに「もうどうなってもいい」というかそういうモードになって、自分の世界に向き合うことができたみたいな感じで。「2回生まれの人」っていう言葉があるらしいんですけど。ちょっと本持ってきていいですか?

──

ぜひ、ご紹介お願いします。

モリ

今年の春ぐらいにハンセン病の病棟で働いていた神谷美恵子さんの『生きがいについて』という本を読んで感動したんです。当時ハンセン病の方たちってその病気になったことが判明したらものすごく差別されて、隔離されて結婚も許されずみたいな状態です。

 

人間としての喜びを全部奪われて、 一生病棟で暮らさなきゃいけない。でも神谷さんは、人は人間としての尊厳を全部奪われても、舌しか動かすことしかできなくなって絶望した後にも、舌で毎日一編の詩を書くことに目覚めた時に、ものすごく生きる喜びを感じてると気がついたんです。

 

それで絶望の中からもう一度生きる喜びを見出した人っていうのを「2回生まれの人」とこの本の中では紹介されていますね。そうした人々の境遇と自分のような適当に暮らしてこれた人間を重ねるのはちょっとおこがましいかもしれませんが、これを読んで僕も3歳ぐらいから社会で生きていく自信がなかったことを思い出して。

『生きがいについて』 神谷美恵子 著
──

3歳の時になにかあったんですか?

モリ

24時間戦えますかってCMを見た時に隣にいた父ちゃんに、「サラリーマンてこんな感じか」って聞いたら、「そうだ」って言うからものすごくびっくりして。そこから自分はどうやって生きていったらいいかわからなかったし、実際高校生になってバイトしてみたら絶望的に働けないってことに気づいちゃったし。ずっと鬱々と過ごしていたんですけど、考えたら無理に今の社会の仕組みに沿って生きる必要はないな、と。自分は自分の生き方を作り出していいんじゃないかと思った瞬間に、わ〜っと気持ちが軽くなって。

 

周りの人からは「無謀」だとか「なんでそんなに無鉄砲に突撃できるんだ」みたいなことを言われるんだけど、自分としては怖いとかじゃないんですよね。自分で自分の生き方を作っていくと失敗も当然ある。でも自分でやっていると、失敗したらなぜ失敗したのか、その原因が分かってくる。そうしたら次は上手にできる、やれることが増えるので。

自分はどういう町に暮らしたいのか

──

その後、たくさんの失敗を経てお店を運営されていかがでしょうか。

モリ

今自分のお店が存続できつつあることで、自分より一回り下の世代の存在が見えるようになってきていて。このお店を開けて5年経つんですけど、最近この町で生まれ育った19歳の予備校生が初めてふらっとお店に入ってきてくれたんですね。

 

彼は近代文学、夏目漱石とか太宰治とか、その辺の小説が好きで、そういうのは古本としてしょっちゅう入ってくるから、100均コーナーに置いてあるんです。そうしたらすごく喜んでくれて、通うようになってくれたんですけど、彼は〈たみ〉のことも〈朴訥〉のことも知らなくて。自分の生活圏内の半径数百メートルに自分の好きな芸術や古着屋が蠢いているのに。

──

意外と近い場所でなにが起こっているかは気が付きにくいものですよね。

モリ

こんなに近くに住んでいるんですけどね。3.11の震災があったりして地方への移住が盛んになって、注目もされてきたけど、なんらかのスペースなり活動が始まって、もう10年くらい経つ。〈たみ〉ももう8年とか9年。これからはそれに影響を受けた人たちがどういう動き方をするのかなっていうのが未知数で楽しみになってきました。

 

さっき言った19歳の子が、仲間内で「大学に行かずに地元でカレー屋兼レコード屋みたいな場所をやるみたいな選択肢があるんじゃないか」ってことをこの間言っていて。そうなんだよな、地元の人たちがどういう町を自分たちが求めているのか、そういう町にするにはなにがあったらいいのか、そう思ってやってくれるのが嬉しいですよね。

──

それはとても嬉しい気持ちになりますね。自分たちが作った文化がきちんと地元に根づいていく感覚というか。

モリ

実は湯梨浜町って今よそから来た人たちのスペースがほとんどで。実際にもし自分が鳥取で生まれ育っていたら本屋をやってなかったと思うんですよね。鳥取の限界性を身に染みて分かっているから。だからよそからきた無謀な人にしかできないこともあるのかもしれません。

 

このお店にはいろんな本の著者やミュージシャンが来たりしているけど、地元の人はそこに価値は見出していない感じがするんです。この町がどんな町になったら自分が嬉しいのかっていうことを、地元の人自身も考えて欲しいし、もしこのお店でやってることに興味や関心を持ってもらえるならもうちょっと反応があると嬉しいなと思います。19歳の若い子が発見してくれたことで、また新しい動きが蠢いてきそうなことを最近感じてはいますが。

──

地元の方は高齢の方も多いし、なかなか難しいかもしれませんね……。〈たみ〉の取材で町を盛り上げるのにおばさま方が活躍している話を聞き、町に対する主体性がこの町は強いのかと思っていました。

モリ

鬼嫁と呼ばれるおばちゃん集団がいて彼女たちはすごく自主性を持って町にアグレッシブに介入してるんですけど、ごく一部ですよね。 地方はどこも共通してると思うんですけど、俯瞰してみると自分の町が滅びようが栄えようがあまり関心がない人の方が多い。どこもかしこも町はベッドタウン化している気がするんですよね。自分の職場にさえ行けて、安心して眠ればいいみたいな感じだろうから。

──

たしかにそれは日本全国共通していますね。企業やコミュニティに対しても、自分で選ぶ、つくるという意識は多くの人がが希薄かもしれません。

モリ

このお店をやってこういう町になったらいいなとか、畑も開放して〈食える公園〉だとか言ってるけど、でも自分自身もそういう部分があるんです。このお店によく来てくれる地元の賢者のおっちゃんがいるんですけど、そのおっちゃんが、「〈ゆるりん館〉※をみんなで買い支えなきゃいけない」って言い始めて。自分はあまり重要度が分かってなかったけど、高齢化して運転ができなくなると、徒歩圏で買い物ができないと生活が難しい。

 

『みんなの食堂』といって、この町の人たちのボランティアによって200円ぐらいで大盛りのご飯を提供する日が月に一度〈ゆるりん館〉であるんですけど、それに先日初めて行ったらこの町のおばちゃんとかおっちゃんの善意だけで食堂が成り立っているんですね。それに結構感動しちゃって、本当に支えなきゃいけない場所だったんだなってやっと気づけたんですよ。だから町の人に求めるだけじゃなくて、自分ももっと感じていかないといけないなとは感じています。

※ 湯梨浜町唯一のスーパー。町のふれあいセンター的な役割も担っている。

初めて人工埋立地に本当の土が積層され始めたって感じた

──

おもしろいですね。そう言われると自分が住んでいる町のことも、知らないことがたくさんあるような気がしてきました。そういった自主性がある種文化を生み出していくように思うのですが、モリさんはどのように感じていますか。

モリ

幕張の僕の実家のすぐそば、いつもの犬の散歩道に、最近本屋〈lighthouse〉ができたんですけど知っていますか?僕と同じ小中学校で同じサッカークラブの、関口竜平さんという6個下ぐらいの人がやっていて、辿った道筋が似ているんですよね。

 

彼は自分でじいちゃんちの畑の敷地に3坪くらいの小屋を建てて、そこで本屋をやってるんですよ。僕もこのお店の裏に小屋を建てて、最初にそこに住んでこの物件を自力で直して本屋をやってるんですね。最初にSNSで存在を知ったんですけど、彼のやっていることを見ていたら、初めて人口埋立地に本当の文化という土が積層され始めたって感じたんですよ。

──

すごくグッときますね。

モリ

町にはチェーン店は死ぬほどあるんです。アウトレットのショッピングモールがあったり、ご飯屋さんだとかちょっと大きな資本の店は一通りある。でも本屋もレコード屋も古着屋も、ちょっと変な人がやってる怪しげな個人店がなくて。その文化的な空白、埋め立て地のエリアにようやく本当の地層ができて、もし自分が中高生で実家に住んでたら、どういうことがこれから起こってくるんだろうって考えちゃって。

 

〈lighthouse〉って『鬼滅の刃』を買いに小学生とかが通ってるらしいんですよね。3坪だから本当に狭いんですけど、政治的な意見をぎゃんぎゃんツイートしたりする関口さんのチョイスした本がジャンプの漫画の横においてあるわけですよね。小学生が通って、これから中高生になっていく中で、ベッドタウンでしかなかった幕張にどういう地層ができていくのかとても楽しみで。

──

先程からモリさんは文化を地層としてお話いただいているわけですが、非常におもしろいなと感じています。グローバリズムがやったことは文化的な地層にアスファルトでフタをするような行為だとイメージできました。そうなると下の地層との繋がりがなくなってしまう。むき出しの地層が湯梨浜には残っていたから、いろんな文化が少しずつ接続されてきているのだと感じています。モリさんの活動はこれからどのような発展をされていくのでしょうか?

モリ

自分が生まれた時代は解決しなきゃいけない困りごとだらけ。その困りごとをどうすれば解決できるのか、今自分が生きてる中で個人的に色々試して実験するのは、自分の人生の時間を超える世界を考えた時に意味があるんじゃないかなとか思うんですよね。使命感より趣味のようなものですけど。

──

〈汽水空港〉も〈食える公園〉も今の課題だらけの社会へのひとつの解を投げかけている感じですね。

モリ

そうです。ビルを買ってその家賃収入だけで生きていけるようになりたいとか、「全世界固定費むしりとりあい大会」みたいなことをやってると思うんですよ。家賃の5万円を稼ぐために、自分にとって興味のない、意味のない労働をしないといけないこともありますよね。意味がないだけだったらいいけど、誰かから収奪することや、自然を破壊しなきゃいけないことにも繋がっていたりするのが今です。家賃とか税金とか、有無を言わさず奪われてしまうもの、払わなきゃいけないものって収奪の始まりだと思うんですよね。

 

最初に「自分は収奪をやめる」って人が現れてくると、どんどん意味のない労働をしなくていい人が増えていくんじゃないかな。家賃がなくなるとか食費がなくなるとか、そういう社会を本当はみんな望んでいて、やりたいはずだろうって。今そのための実験をやってるのかもしれないです。

──

個人の趣味でありながら、課題をみんなが眺められるようにまな板に載せるっていうことにモリさんは意義を感じてるんですね。

モリ

ティム・インゴルドっていう人類学者がいるんですけど、『人類学とは何か』という本を出していて。ちゃんとした文言は忘れちゃったんですけど、「人類学は今生きてる人たちとともに考える哲学である」、「今生きてる人たちと共に生きて、その課題に向かって実践していくことを参与観察と言うのである」みたいなことを言っていて。

 

人類学って遠く離れた人類の生活のあり方を研究するとかじゃなくて、今生きている、人類の一人である自分に突きつけられている課題や問題ごとをどうやって今生きてる人たちと乗り越えていくのか、生活を組み立てていくのかということだと思ったんですよね。僕もリアルタイムで参与観察していきたい。

──

モリさんは自分のレベルがあがった時の音として「テッテレー」って言われるじゃないですか。

モリ

よく知ってくれてますね。

──

この場所で自分自身でアドベンチャーをしている、だからこその「テッテレー」なんだと思いました。それはやっぱり都市じゃできなくて。都市にあるのは偏った別のアドベンチャーで、コンクリートジャングルを一度ぶっ壊して地層を掘り起こして、他の人より早く土を載せていくみたいな。モリさんはもう少し分厚いむき出しの地層を踏みしめながら掘り起こしていて、次にどんな土を載せるかまわりの人と一緒に考えている。

モリ

個人の人力で掘り起こせるレベルですけどね、こっちは。都会はもう重機が必要なんで。

──

僕は最近「共感」って言葉に違和感を覚えていて。人と人の活動、パーソナルな実践的な活動こそが人生の軌跡で、安易な「共感」ではなくそういった異なる軌跡が「重なる」ことで文化が生まれて積もって地層になっていく。ここでは、モリさん自身の活動の軌跡に、外部からやってきたいろんな方の軌跡が重なって分厚い地層になってきているんだろうなと。必ずしも美しい答えや明確な結論じゃないけど、一個一個自分で実践してそれを導き出しているからこそできるのだと感じました。そうしないと見えない景色があるような気がします。

モリ

そういう感じにしていきたいです。まとまりましたね。まとめてくれたって思いました。

──

本当ですか?(笑)。今日はありがとうございました!

左:モリテツヤ / 右:モリアキナ

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