COLUMN

たなからルーツ Shelf_01 - TheStoneThatBurns アベヒロキ –

MUSIC 2020.12.14 Written By 小倉 陽子

誰かの家を訪問することがあったら、CD棚にどんな音楽が並んでいるのかつい気になって眺めてしまうことはないでしょうか?その人の嗜好の向こう側に、どんな音楽とどのように歩んできたかが垣間見え、その人のことをまた少し知ることができるスペース。

 

この企画ではミュージシャンのCD棚を拝見し、本人のルーツとなっている2枚のディスクを紹介していただくとともに、棚に並ぶラインナップから現在の創作に辿り着くまでのストーリーに思いを巡らせます。

第1回目は、京都を中心に活動するオルタナティブ・ロックバンド、TheStoneThatBurnsのギタリスト、アベヒロキの棚を探索します。

TheStoneThatBurns

2012年に関西にて結成された4ピースロックバンド。

活動初期よりコンスタントにリリースや全国的なライブ活動を続け、2017年12月に英国レーベルより初のフルアルバムをリリースし海外デビューを果たす。

80’s / 90’sUKカルチャーからの影響を軸にしながらも多種多様なジャンルの要素を取り入れた楽曲はスタイリッシュかつ熱量を感じさせる。また、観客を没入させ躍らせるライブパフォーマンスは多くの音楽関係者から高い評価を受けている。

shelf01 アベヒロキ(TheStoneThatBurns)の棚

ギターヒーローだとかギターロックという言葉を私たちが使うように、ギターというパートはバンドの中で主役となり輝くことが多い。世界中に、ギターが楽曲を引っ張っている名作があまたあることを私たちはよく知っている。例えば、Led Zeppelinの『Led ZeppelinⅣ』。ジミー・ペイジと言えばギターヒーローではないですか。

 

TheStoneThatBurns(以下、TSTB)の楽曲は、軽やかなシンセサイザーとダンサブルなビート、淡々ともしている英詞のボーカルに、クリアなギターリフが伴走する。巧妙に絡み合う音に心地良く踊らされながらも、おそらくギターロックと呼ばれることはないTSTBの楽曲なのに、そのギターの音やフレーズに惹き付けられるのはなぜなんだろう、と思い巡らせる。

 

TSTBの“Videogame”は確かに、サビに向かってアガっていく展開と、それを先導するエモーショナルなロック・ギターの前で、思わずステージにのめり込まずにはいられない。ところどころ見える、観客の心を掻き立るヒーロー然としたプレイの片鱗。そう!まるでジミー・ペイジのギターソロをも想起させるそれ。

 

一方で、TSTBが昨年リリースしたEP『Game Center』の“Whatever You Want”や“Little Girl”のように、歌やリズムを引き立てることに注がれるギタープレイ。例えば、もしも、Depeche ModeやKraftwerkの楽曲の中でギターが鳴っていたら?どうやってその世界に溶け込んでいく?もしくは切り込んでいく?それは、ギターロック然とした在り方を問うて生まれてきたカウンター音楽に、再度ギターで応えようとするような彼の哲学を感じないだろうか。

 

などという妄想を一旦胸に、選ばれた2枚のディスクを見てみよう。

Disc01:あなたが音楽を好きになったきっかけの1枚

Hippogriff『オーロラビジョン』

本当はHippogriffのボーカル、高木誠司さん(今でもソロや作曲家で活動されてます)がされていたHippogriffの前身、nicotineheadの音源を紹介したかったのですがすぐに見つからなかったので……。中学の頃、僕が初めてインディーズのバンドのライブを見にライブハウスという場所を訪れたのがそのnicotineheadのライブでした。漠然とした“音楽”というコンテンツの中にハッキリと“バンド”の存在意識した時期でもあり、自分でバンドをしたいと思うキッカケになったバンドの一つです。

 

あと当時高木さんが連載されていたブログの様なもの?の締めくくりに1組影響を受けた音楽を紹介されていて、その名前をメモしてはレンタル店にCDを借りに行ったりしてました。そこから関連の音源とかレコメンドを聴いたりしたし音楽を自分で掘り出すキッカケという意味でも未だにかなり影響力があったと思います。バンド名は確かRadiohead由来と仰ってたような。(アベヒロキ)

Disc02:あなたを成長させた1枚

Incubus『A Crow Left of the Murder...』

この頃は所謂アメリカンなニューメタルやエモ / ポップパンク、ハードロックと、所謂ブリティッシュなブリットポップ、ガレージ、ポストパンク等を平行的に聴き漁って居た時期で格好良いギタープレイ像が自分の中に別枠で複数個存在して居たんですが、その平行だった2つのラインを見事にクロスオーバーさせてくれたのがこのアルバムでした。

 

クレバーで時にアヴァンギャルドなプレイ、ヘヴィな展開だけどヘヴィになり過ぎない曲調、めちゃくちゃ速弾きなんてせずともそれ一本で歌と対峙するくらい曲を彩るギターアレンジ。そこに詰まった拘りに僕は初めてバンドの音楽的美学と言うものを感じ、意識し始めました。

 

以降このスタイルのギタープレイはTheStoneThatBurnsとしての自分の芯の部分に必ず存在していると思います。

 

ちなみにギタリストはMike Einziger、彼はAviciiの代表曲“Wake Me Up”の共同制作者の一人でもあります。再生してすぐノイズから幕を開けるM1“Megalomaniac”のヘヴィなイントロリフからAメロの浮遊感のあるフレーズへの変化。M6“Sick Sad Little World”には長編ギターソロがあったり聴きどころ満載です。(アベヒロキ)

ギターロックじゃないバンドサウンドの中に見るギターヒーロー

『オーロラビジョン』はM1“『L』”のイントロから高圧でパワフルなギターの音色が、ギラギラとした希望と煌めきに満ち溢れている。これぞ、ギターロックの輝かしさ。

だけど、ヒーローっぽいフレーズで主役に躍り出ずとも、オーディエンスの耳にのこり心をつかめるギター。TSTBの楽曲のような、決してギターロックと言わないような楽曲の中でも輝くギター。Incubusはギターロックではあるけれど、マイク・アインジガーのヒーロー像は、ちょっと異端なそのプレイに魅せられるようなギタリストではないだろうか。そんなプレイを自分に採り入れたアベは、自分の初期衝動であるギターロックの輝かしさを捨てることなく、TSTBのプレイヤーの一人として楽曲を、歌を、リズムを立てることを目指したのではないか。そこにあるのはバンドの中のギターの役割について思案し続ける、ひとつのギターヒーロー像。

 

バンドという営みが美しいのは、別々のルーツを持ったプレイヤー同士が自分を貫くことと自分を変えていくことのバランスを取りながら、新しい価値を生み出そうと折り合っていくところだと思う。そのことをポジティブに体現し続けるTSTBは、常にその在り方を問い続け変わり続ける、現代のオルタナティブ・ロックだ。

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