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寺田町Fireloop

MUSIC 2020.07.16 Written By マーガレット 安井

大阪は天王寺区寺田町。住宅地ながら、商店街や飲食店が豊富にあり「住みやすい」という言葉がぴったりの町だ。そんな土地にあるライブハウスが寺田町Fireloopである。2001年に大阪環状線寺田町駅の高架下でスタートし、2011年に現在の場所へ移転。そんなFireloopのPAであり、代表の足立浩志さんはライブハウスで働いた経験がないまま運営をスタートさせ、独学で「どうしたら良い音がライブハウスで聴けるのか」「どうしたらライブハウスが若者の遊び場の1つとして認知されるか」を考えながら働いてきた。

 

そしてコロナ禍でライブハウスを休業せざるを得ない状況でも、Fireloopはアクリル板とアミッドスクリーンを使用し、新しいライブの形を模索中である。歩みを止めずに、次なる一手を打つ続けるFireloopの根底には、ライブハウスを最高の「エンターテイメントスペース」として進化させたいという、未来を見越した強い想いがある。アンテナではライブハウスの可能性を広げていきたい、と本気で考えている店主の今までと、これからを伺ってみた。

住所

〒543-0052

大阪府大阪市天王寺区大道4丁目10−17 新井ビル B1F

お問い合わせ

TEL:06-6796-7701

Mail:contact@fireloop.net 

HP

http://fireloop.net/

Twitter

https://twitter.com/Fireloop_info

ライブハウスを良く見せたいという“見栄”がここまで突き動かしてくれた

──

足立さんが音楽の仕事に就こうとした、きっかけは?

足立浩志(以下、足立)

母親が音楽の先生で、家にDTMがあったんです。中学生の頃からそれを触り、音楽を作っていました。高校の頃には音楽制作の仕事もやりだし、大学生の時にはフリーランスで音楽関連の仕事をしようと考えていて。その選択肢の1つにライブハウスがありました。そんなことを考えていた時にたまたま大学の後輩である野津知宏(ASR RECORDS代表、大阪南堀江knaveイベント制作)に「ライブハウス、一緒にやりませんか」と誘われたのがきっかけで、旧店舗のFireloopをスタートさせました。

──

音楽家としての道ではなく、なぜライブハウスをやりたかったのですか?

足立

昔は楽器の音が大きすぎて、歌が聴こえないライブハウスがたくさんあったんです。しかしお店側は「それでもええねん」という態度で、さらにお客さんもめちゃくちゃ盛り上がっていて。それを見ながら「この状況、おかしくない?」という疑問をずっと抱いていたんです。それなら、自分が快適だと思うハコを作るべきではないか?と考えていました。

 

それでライブハウスを始めてインターネットで音響機材の勉強を始めましたが、バンドを呼んでライブをすると「(音響が)全くダメ」と言われてしまって。理論の勉強しかしていなかったので当たり前ですよね。なので、音響に指摘をしてくれたバンドに「タダでいいから練習をしていって」と言ってPAの練習に付き合ってもらいました。バンドから率直な意見をもらって試行錯誤を繰り返す。「低音が回るな」と言われて調べたらステージの中が空洞で、トイレットペーパー2000個買ってきて、ステージの中を埋めたりしましたよ(笑)今のFireloopの音は、いろんなミュージシャンとインターネットのおかげで出来上がったと言っても過言ではないです。

──

音へのこだわりの源流が垣間見れたような気がします。一時期は2店舗で営業をしていましたよね。

足立

あの時はめちゃくちゃしんどかったです。結果2店舗営業は僕には向いていなかったと思います。

──

それはなぜですか。

足立

それぞれのクオリティを追求しようと思うと、そこまでキャパシティが追いつかなかったんですよね。1店舗に注力して、それを最大化する方が自分には合っていると思ったんです。実際ハコの大きさにも差があったので、メインとサブのような捉え方もされました。それも本意ではなかったことが大きいです。

──

そこまでして足立さんがライブハウスをやろうとする原動力って、一体何なんですか?

足立

「何かの劣化版では意味がない」じゃないですか。例えばキャパシティ100人程度の小さなハコが、何百人、千人も収容できるライブハウスに勝つには、ここだけでしか体験できない価値や、かっこいい音を作らないと目指さないと、そもそも比較対象にもならないんです。唯一無二な場所を作りたい、そんなかっこいいライブハウスを作りたいから、ですかね。

──

オリジナリティーを求め続けるということですね。

足立

とても求めています。流行っているものを、追いかけても、追いついた時にはすでに流行りではなくなってますよね。流行っている時点で、そこに目をつけるのは遅いんですよ。僕はライブハウスという業態で、いかに流行に左右されない場所を作れるかを考えているんです。自分たちが作った独自の価値で、あらゆるものの一番になりたい。そんな想いで仕事をしています。

ライブハウスが「気軽に遊びに行ける場所」という選択肢に入っていない。だから僕らがやるべきことをしたい。

──

足立さんといえば『バンドマンが知るべき100の秘訣 PAエンジニアから見たバンドの音作り』という本を出されていますよね。この本はTwitterの発信から生まれたようですが、なぜバンドの音作りノウハウをツイートしようと思ったのですか?

足立

ライブハウスのPAがノウハウを教えて、ミュージシャンが上手くなることは、プラスにしか働かないことなんですよ。なぜならライブハウスで良い音が鳴れば、お客さんも盛り上がるし、集客にもつながると信じています。

──

なるほど。この本のように業界にとってよいと思う知識やノウハウを共有する姿勢は、足立さん個人に限らず、Fireloopの活動からも見受けられます。例えばタイムテーブルを制作シートである『タイたん!』とかはそうなのかと。

足立

『タイたん!』はどのライブハウスでも活用してほしいので解放しました。バンドが急に「リハーサルをなくして転換に15分ほしい」といわれた場合、そこからタイムテーブルをいじるのは結構大変なことです。でも『タイたん!』のようにエクセルを使ったらタイムテーブルを簡単に変更できるし、余った時間で出演するバンドマンたちと乾杯もできますしね。実際にライブハウス運用している人間が欲しくて作ったものなので、便利な道具だと思いますよ。

──

Twitterの話や、『タイたん!』の話などを聴くと、取り組み1つ1つが、ライブハウス業界全体を底上げする方向へ向かっているような気がします。

足立

正直、ライブハウスという商売に対して、疑問に思う部分があって。ライブハウスって音響の面では進化しているし、昔のように歌が聴こえないバンドもいないですよね。しかしビジネスモデルに関しては、昔から同じことを続けている。他のエンターテインメント業界はどんどん進化しているのに、ライブハウス業界はよくも悪くも昔から変わってないんですよ。この間、VR(拡張現実)のゲームを体験したんですが、膝から崩れるくらいに面白くて。同時に「ライブハウスでもこれくらい面白いことがしたい」と思ったんです。

 

そもそもライブハウスは今「気軽に遊びに行ける場所」という選択肢に入っていないと思っていて。例えば友達と遊びに行くなら「カラオケ」「ボーリング」は浮かぶ。だけど「ライブハウス」は相当ライブが好きじゃないと選択肢にはあがらない。だからエンターテインメントスポットとして、ライブハウスの質を向上させたいというのは常に考えています。

──

エンターテインメント化というのは、ライブハウスをカジュアルにしたいということでしょうか。

足立

いや、カジュアル過ぎてもライブハウスのエンターテインメント性は下がると思います。例えばライブハウスに行って受付で普通の可愛い女の子が出てくるよりも、入れ墨バッチリ入った兄ちゃんが愛そう悪くやっていたほうが「ライブハウスにきた!」という感じがするじゃないですか。アンダーグラウンドの感じを出すことも、ライブハウスのエンターテインメント化する一因になるのではないかと思います。だからあまり浄化をせず、ハードボイルドな部分ものこせるようには心がけていきたいです。

お金は減った。でも面白いことを考える時間は増えた

──

最近だとFireloopは積極的に配信ライブを実施してますね。

足立

今まで遠距離で行けない人や病気で家から出れない人、音楽は好きだけど、ライブハウスは音がうるさいし、タバコ臭くて嫌だ、という人はライブが観たくてもライブハウスでは観ることができませんでした。でも配信ライブを行うと、ライブを観に行けない人でも、家でライブを楽しめます。今後1枚でもチケットが売れ続けるなら、続けようとは思いますね。

──

あと先日、足立さんのTwitterでバズっていましたが、このステージはカッコいいですね。

足立

ステージにアクリル板を設営してます。もし映像を出す場合はここに網戸を付けます。これはアミッドスクリーンといって、網戸が透過スクリーンの役割を果たすんです。数十年程前からある技術で、平沢進さんとかもライブで取り入れています。

──

大阪府の感染予防のためのガイドライン案に書かれていた「ステージと客席間は2m以上確保するか、透明のアクリル板や透明ビニールカーテン等で遮蔽する 」をうまく活用されていますね。

足立

透過スクリーンをうちでも使いたい、とはずっと考えていました。それで「アクリル板で遮蔽(しゃへい)する」と書かれたのを見て「これはアイデアを試す、いい機会ができた!」と思ったんです。まだアイデアの段階ですが、これを使用してニコニコ動画のように、ライブ中にお客さんのコメントをスクリーンへ出してみたいと考えています。生放送の醍醐味って、双方向のコミュニケーションと時間的な共有じゃないですか。リアルタイムでお客さんがコメントを出して、それにバンドが反応する。それができれば面白いのかなと思います。

──

この数カ月、コロナの影響もありライブハウスは休業せざるを得なくなりました。でも今までの話を聞くと、この期間を未来のため投資しているように感じます。

足立

コロナの期間って、モラトリアムじゃないですか。コロナの前とかは、毎日稼働していたし、業務が忙しくてライブハウス自体を改善することができなかった。そんな時に営業ができなくなって、めちゃくちゃお金は減りました(笑)だけどその分、店の改善のために時間を使うことができたし、面白いことを考える時間は増えたんで、そこは良かったと思います。これから何か始められそう、という期待が今はあります。

──

本当に、足立さんは色んなことでライブハウスに来た人を楽しませようと考えていますね。

足立

僕はバンドが毎日見れたらそれが最高のエンターテインメントだと思っているし、そこには命を捧げています。正直な話、僕はライブハウスよりかは、エンターテインメントスペースをやりたいんです。音楽が得意で、ロックバンドのライブを専門にしていますが、面白かったら音楽以外のことをやってもいいと思います。

──

最後に足立さんが考えるライブハウスの魅力と、今後の展望とあれば。

足立

ライブハウスの魅力は「音楽をリアルで聴きにいける所」それに尽きると思います。もともと音楽はリアルだけのものでした。だけど蓄音機が発明され、レコード、CD、配信と、音楽はメディアで楽しむようになりました。

 

ライブハウスよりもCDの方がいい音といわれて久しいですが、僕らはCDに負けない良い音を鳴らさないと意味がないと思っています。実際、技術やテクノロジーの発達で、ライブハウスでCDに負けないくらい音が出る時代は近づいてきている。Fierloopでも「CDで聴くよりも、音が良かった」と話されるお客さんもいました。だからFierloopは「生で聴くロックバンドって、すごい」といわれる場所にしていきたいし、それが魅力であるべき場所になればと思っています。

 

あと先程、VRゲームを楽しんだ話をしましたが、ライブハウスにあって、ゲームセンターにないものって「爆音」だと思うんです。さすがにゲームセンターでは防音設備も整っていないし、大きい音は鳴らせない。だけどライブハウスではそれが出来る。プロジェクターやアミッドスクリーンもFireloopにはあるので、それを活かして新しいエンターテインメントスペースを作っていきたいと考えています。

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