COLUMN

お歳暮企画 | MOVIE OF THE YEAR 2019

MUSIC 2019.12.09 Written By 岡安 いつ美

年の瀬に差しかかり、今年を振り返る記事も増えてきましたね。

 

こと映画で2019年を振り返ると、世界累計興行収入最高記録を更新した『アベンジャーズ / エンドゲーム』や国内でのオープニング興行収入が絶好調な『スターウォーズ / スカイウォーカーの夜明け』といった超大作をはじめ、トム・ヨークがはじめて映画音楽を担当したリメイク版『サスペリア』、Netflixオリジナル作品の『アイリッシュマン』や『マリッジ・ストーリー』、ロングランヒットした『愛がなんだ』(アンテナでもコラムを載せています)、他にも『スパイダーマン:スパイダーバース』『運び屋』『アス』『ジョーカー』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』……などなど個性豊かな作品の数々が公開され、話題を呼びました。

 

この記事では2019年にアンテナの記事に関わった「映画が好き」なアーティストに声掛けをさせてもらい

  • 2019年に映画館で上映された映画
  • 2019年に初ソフト化された映画

の中から2019年ベスト作品を3つセレクトしてもらいました。

 

あなたはどんな作品を今年見ましたか?

ぜひこの記事を見ながら今年見た映画を振り返ってもらえればと思います。

川端安里人

わかりやすさを尊重しすぎる現代と個人的な趣向とのズレに日々苛まれるアンテナの超幽霊部員。実家の和菓子屋で働いたり、みなみ会館の館長とラジオで映画の話をしたり(http://radiocafe.jp/20161102/)、スペイン語を勉強したりしながら謎の人を目指しつつ相変わらずひたすら映画を観続ける生活を送っています。マイブームは映画サントラのLP集め、最近ついたあだ名はカルチャーマフィア、別に危ない男じゃないですよ。

いやはや、ここ数年「映画を観る」とはどういう行為か、もう一度しっかりと考え直す、定義し直す必要があると思える。それくらい映画の存在の仕方は、多種多様になってきている。

 

今の多くの若者にとって映画は「NetflixやAmazon Primeでアップロードされているもの」認識だろう。もちろん『アイリッシュマン』のように、媒体があったからこそ実現した素晴らしい映画も存在する。

 

一方で『キャプテン・マーベル』で過去の象徴のように舞台となったレンタルショップも、日本では未だに現役で隠れた傑作たちがひっそりと棚に陳列されているし、復興シネマライブラリーなどと銘打ってほぼ通販限定で1950年代などの名作が続々と初ソフト化している。実際このソフト化がなければ、素晴らしい西部劇作家として知られるバッド・ベティカー監督作品なんかは観ることができなかっただろう。

 

もちろん今までもそうだったように、各地の映画祭や大学など関係機関での特集上映でも見る機会のない作品たちは愛好家のために上映されている。山形ドキュメンタリー映画祭で観たソフラブ・シャヒド・サレス監督作品のように、大傑作と出会えることは決して珍しいことではない。言うまでもなく映画館では常に新作や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウエスト』のような名作のリバイバルが上映されいるのも事実だ。

 

結局何が言いたいかと言うと、この歳になっても自分の不勉強具合を痛感するし、映画は見れば見るほど「観れていない」、もしくは「観逃している」と心底考えてしまう。そんな前置きを経つつ、今年なんとか映画館で観ることができた作品の中から、3本を選出します。

3位:幸福なラザロ

長らく不調が続いていたイタリア映画界からの素晴らしい一本。それこそ『ジョーカー』とも共通するような現代を批判的に見つめ直すメッセージ性を放ちつつもアメリカがコミックキャラを“堕天使化”させたのに対して本作では聖人を現代に復活させる。本当にさりげなく、それこそくどい説明もなしに「これは映画だから」としれっと奇跡を起こすそのあっけらかんとしつつも芯の通った演出にフェリー二やアントニオーニといったイタリア映画伝統のDNAが未だしっかりと受け継がれている事を確信できた。

2位:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

『イングロリアス・バスターズ』以降映画を武器に暗い歴史の仇を討つ唯一無二の作家になったタランティーノ、彼はもはや『キル・ビル』のようなオマージュだとか『パルプ・フィクション』のようなオシャレ感だとか『ジャンゴ 繋がれざる者』のようなジャンル映画的な魅力だとかを超越して純粋な愛の境地にたどり着いてしまった。あぁ、どうして良い監督はただ車を走らせるだけのシーンでここまでの至福を味あわせてくれるんだろう。

1位:ジョーカー

極めて政治的なメッセージを発しつつも政治性はなく、極めてポップカルチャー的な作品でありながらポップではないこの作品こそやはり今年を代表する一本と言って良いでしょう。意図的に観客を扇動し困惑、混乱させる演出術、もはや説明する必要のないようなホアキン・フェニックスの名演、香港やレバノンで実際に起こった暴動への影響力、様々な含みをあえて持たせ雪だるま式に世界中を転げ回ったこの映画の中心にはクソみたいな世界に産み落とされた望まない才能を持ってしまった男の極めて古典的な怒りが満ちていた。こんなクラシックで強烈なパンチをこのクソみたいな時代に受けることができた事を自分は素直に喜びたい。

川端 安里人の選ぶMOVIE OF THE YEAR 2019

 

位:ジョーカー

2位:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

3位:幸福なラザロ

北村眞悟(シネマ尾道)

尾道唯一の映画館シネマ尾道の副支配人。尾道には15年くらい住んでいる、かも。

http://cinemaonomichi.com/

3位:新聞記者

シネマ尾道はワンスクリーンながら2019年は約160本の映画を上映。基本1週間上映ばかりしているような劇場にあって、11週という今年1番長い期間上映したのが『新聞記者』。プロデューサーは『あゝ、荒野』『宮本から君へ』といった世を問う作品を連発している河村光庸。センスあふれる若い藤井道人監督とタッグを組んで、政府やメディアに不都合な真実を描いた。リスキーなテーマだけに宣伝の難しさもあったようだけど、蓋を開ければ大ヒット。独立騒動ののんを声優として起用した『この世界の片隅に』もそうだが、タブーもジンクスも関係ない、凄いプロデューサーと監督やキャストが揃って面白い映画を作れば、ヒット映画が生まれる時代になっている。

2位:宮本から君へ

怒りと痛み、激しさ。血と汗と涙と体液、そして拳までもがスクリーンから飛んでくるかのよう。愚かしくてダサくて、けれど、むき出しの感情でぶつかり続ける宮本たちの姿は美しすぎて観ていて涙がでてくる。原作の連載は90年代。池松壮亮、蒼井優、『ディストラクション・ベイビーズ』を手掛けた真利子哲也監督、この三人の登場を映画の神様は待っていた。蒼井優の階段の降り方が新井英樹の漫画そのもので嬉しくなった。この映画こそが日本映画のど真ん中。「人は感動するために生きてっからよ」いただきました!

1位:ROMA / ローマ

アルフォンソ・キュアロンが前作の『ゼロ・グラビティ』から方向性を変え、家族や乳母との思い出を描いた。Netflixオリジナル作品ということで、映画賞などで配信作品は映画か否かって話題がでたりもしたのだけれど、劇場の人間の立場としては、面白ければ配信作品でもアマチュア作品でもテレビドラマでも上映したいなという思い。なかでも『ROMA / ローマ』はキュアロン監督自らが撮影した美しいモノクロ映像や繊細な音響設計など、映画館で観てほしい作品。幼少期には理解できなかった大人たちの涙や怒り。犬のうんこからフルチンの空手演武まで、すべてのシーンが愛おしい。

北村眞悟の選ぶMOVIE OF THE YEAR 2019

 

1位:ROMA / ローマ

2位:宮本から君へ

3位:新聞記者

桑原雷太

フォトグラファー 時々服屋さん。

 

Instagram:https://www.instagram.com/raitakuwahara/

毎月1日の映画の日に4、5本一気に観ることを始めて20年近く。2019年、今の所劇場で鑑賞した作品は60ほど。期待を大きく外す、ガッカリさせる作品が年々増えていくのは何故だろう。小難しいものからハリウッド大作まで何でも観ますが、映画に求めているのはやっぱりエンターテインメント。多様性を尊重してるフリして、過剰な配慮をしてるだけの昨今に憂えています。

3位:バーニング 劇場版

村上春樹の『納屋を焼く』 をモチーフにしたミステリー?原作通りではなく、終始淡々と進みながらもヒリヒリとした緊張感が漂い、グザヴィエ・ドランの『トム・アット・ザ・ファーム』のようにハリウッド作には無い空気感がたまらない。これもラストに大きな衝撃を迎えるけど、分かったような分からないような、腑に落ちたような落ちなかったような、村上春樹を読んだときにやってくるのと同じ、何ともいえない余韻が残る。

 

主役の男の子、普段はイケメンでやってるのが全く想像つかないほど素晴らしい演技。日本の映画も頑張ってほしいな。

2位:ワンス・アポン・ア・タイム・イン ハリウッド

最後の最後近くまで、これは確かに作りこまれてるけども面白いんだろうか?と不安に苛まれながら迎えたラスト15分ドッカン!!

 

エグいながらも爽快なラストシーン、このために2時間かけたとはなんて素敵な。実際にあった事件をもとに、タランティーノのこういう結末であってほしかった(事件のひどい内容を知ると誰でもそう思える)を、映画で叶えるなんてとても素敵で、映画て感じがする。

 

観る前にシャロン・テート殺害事件を予習しておいたほうが絶対に良い。

1位:EXIT

所謂サバイバルパニック映画。高層ビル群を舞台に有毒ガスパニックから回避する奮闘を、ハラハラドキドキ、笑い、感動、手に汗握るとはまさにこのこと!を思い出させてくれる秀作。韓国の家族文化の取り入れ方も上手く、最後のお父さんの息子にかけたお礼の言葉で涙しない人なんているんだろうか。知ってる俳優さんがいなかったけど、何の問題もなく面白い。人気度先行でキャスティングしてる日本映画に見習ってほしい。

桑原雷太の選ぶMOVIE OF THE YEAR 2019

 

位:EXIT

2位:ワンス・アポン・ア・タイム・イン ハリウッド

3位:バーニング 劇場版

篠田知典

映画『下鴨ボーイズドントクライ』(2018)『左京区ガールズブラボー』(2017)監督。またHomecomings、ベランダ、浪漫革命、踊る!ディスコ室町ら多くのバンドのMVを手掛ける。
新作はバンド突然少年に密着した『DOCUMENTARY OF SUDDENLY BOYS~火ヲ灯ス~』(MOOSIC LAB2019特別招待作品)。

 

最近指がとれかけた。

3位:マリッジ・ストーリー

ノア・バームバックとマイク・ミルズの映画はいつも本当に優しい。貴方たちみたいな映画監督がいるからまた映画が撮りたいと思えます。ありがとう。somewhereという映画を初めて観たときと同じくらいに感動しました。

2位:

ホウ・シャオシェンの弟子かつエドワード・ヤンの後継者と言われるホアン・シー監督の長編第一作。現代の台北で生きる男女3人の映画。街で暮らす埋まらない孤独を抱える人々の映画はやっぱり好きです。「距離が近すぎると愛し方を忘れてしまう」というセリフ。高速道路の渋滞を描いたラストシーンが美しすぎる。

1位:All This Panic

ブルックリンで育った7人の女の子を3年に渡って追ったドキュメンタリー。特別なことは何一つ起こらないし、全てが特別な時間だったと気付く。好きな女の子がこの映画を観たあとに「昔こんな気持ちを持っていたようないなかったような」って話してたのが良かった。魔法のような時間は瞬きする瞬間に過ぎていってしまう。

篠田知典の選ぶMOVIE OF THE YEAR 2019

 

位:All This Panic

2位:台北暮色

3位:マリッジ・ストーリー

須田亮太(ナードマグネット)

ナードマグネットというバンドでボーカル&ギターを担当しております。今年はフルアルバム『透明になったあなたへ』をリリースして、アンテナでもかなり濃いインタビューを掲載していたました。映画や海外ドラマが好きな人はより楽しんでいただける作品になっていると思います。よろしくお願いいたします。

3位:グッド・ヴァイブレーションズ

2012年に製作された映画なんですが、日本でがっつり劇場公開されたのは今年が初ということで無理矢理ねじ込みました。北アイルランド、ベルファストのパンクロックシーンを描いた実話。アンダートーンズとかスティッフ・リトル・フィンガーズとか好きな人は必見だし、そうでなくても音楽が好きならみんなグッとくると思いますよ。今のギョーカイに必要なスピリットってこういうことちゃうんかと。ちなみに本作の字幕翻訳とパンフのコラムを担当された岡俊彦さんはローリング・ストーン ジャパンにてナードマグネット『透明になったあなたへ』のレビューを書いてくださっています。岡さんが定期的に開催してる映画上映イベント『サム・フリークス』は要チェックですよ。

2位:ラスト・クリスマス

「なんかベタなロマコメっぽいけどポール ・フェイグの新作だし観とくか〜」くらいのテンションで行ったらめっちゃ泣きながら劇場を出る羽目になりました。おもてたんと違う!万人にお勧めできる(特にジョージ・マイケルのファンは必見かと)最高のクリスマス映画でありながら、うわ〜イギリスも日本と似たような状況なのかな…と思わされる内容でもあり、あらためてこんな世の中で自分はどう生きていくかということを考えたりもしました。

1位:愛がなんだ

私の周りで今年一番盛り上がってたのはこの映画だった気がします。アベンジャーズやジョーカーもみんな観てたけど、これが断トツかも。人によって感想が全然違うのも面白かったですね。うちのマネージャーYは「わからなすぎて具合悪くなった」と言っていました。「誰に感情移入したか?」みたいな話をしがちだけど、私はどっちかというと一歩引いて観てしまってたので、終盤の台詞の応酬や視線の行き交いなどにぞくぞくして「うおーー面白え!!」って感じです。最終的には誰のこともジャッジしない監督の眼差しが優しい。

須田亮太の選ぶMOVIE OF THE YEAR 2019

 

位:愛がなんだ

2位:ラスト・クリスマス

3位:グッド・ヴァイブレーションズ

 

※『アベンジャーズ:エンドゲーム』については「別次元の何か」なので除外しました。

藤井基二(弐拾dB)

藤井基二(ふじいもとつぐ)
1993年広島県福山市生まれ。
京都でボンクラ学生として過ごし、就職もせず(できず)卒業。
2016年尾道市で古本屋 弐拾dBをオープン。
平日は23時-27時の深夜に店を開けている、植木鉢下のナメクジ的生活。

 

Twitter: @1924dada

3位:僕たちは希望という名の列車に乗った

店に、街に時々父親が遊びにやってくることがある。本好きの父親が今の自分を形成したのは多分にあるのだけれど、しばらく二人でいるとくだらないことで喧嘩になってしまう。父親の愛情が子供には煩わしくなることも、子から親への気遣いが、親には痛々しいこともままある。
『僕たちは』を観たとき、親子の物語だと思った。市議会議員の父親を持つクルト、労働者として家族を養うテオの父親。亡き父親を英雄視するエリック。それぞれの若者が、否応なく父という存在を強く意識してしまっているのは、東西冷戦下の厳しい時代背景とはいえ、どことなく親近感も感じてしまう。
物語終盤、クルトが西ドイツに渡るために父親が証人になってサインするシーン。「じゃあ、またあとで」と言いながらも、最後の握手をする姿はぐっときてしまった。

そんな僕の父は尾道から電車で20分の隣町に住んでいるので、いつでも会えちゃうのだけれど。なかなか会おうとはしていない。お正月には「お墓参り」もかねて会いにいこうかな。

2位:岬の兄妹

普段、本を読むときはお客さんから買い取った本のなかから面白そうなものを手当たりしだいになってくる。好きな本はと聞かれると「どうしようもない、救いようのない人がでてくる作品」と答える。川崎長太郎や西村賢太など、私小説を読んでいる時間は苦しくも心地いい。
突き抜けて駄目なふたりの主人公『岬の兄妹』はまさしく、そんな私小説的な「どうしようもなさ」が作品全体に漂う。悲しいし、苦しい。けれど腹は減るし、簡単には死ねない。
妹、真理子が初めて稼いだお金で買ったハンバーガーを貪り食う兄妹の姿。兄、良夫がプールの真ん中で脱糞して絶叫するシーンは妙に感動してしまう。映画のラスト、最終行はどのように終えるのだろうと途中から想像しながら、少しは救いがあるのではと期待した自分がいた。
実際のラストを観て、清々しくない「どうしようもなさ」に、「はぁ〜やっぱりそうなのかぁ…」とため息を漏らす。

1位:グリーンブック

古本の引き取りで車を運転していると、ラジオから「今話題の『グリーンブック』のサントラよりもう一曲聴いてもらいましょう」とDJが語りかけた。そのあと流れだした音楽は国道沿いの何気ない風景を変えてゆく。「あ、ちょうど近所の映画館で上映しているし見に行こう」とそんな気軽な気持ちで観に行った。
ドン・シャーリーが車のなかでトニーに教わりながらケンタッキーを不器用に食べるシーン、あるいはトニーがドン・シャーリーに教わりながらアドバイスを貰って手紙を書くシーンなど、思わずニヤついてしまう。そんな映画らしい展開が散りばめられているからか、人種差別を描きながらも、息苦しさは感じず穏やかな気持ちで最後まで見入ってしまった。
クリスマスの日に家族や親しい友人たちとテレビで観てみたい、そんな映画。
あと、観終わって映画館を出るとカティーサークを飲みたくなった。

藤井基二の選ぶMOVIE OF THE YEAR 2019

 

1位:グリーンブック
2位:岬の兄妹
3位:僕たちは希望という名の列車に乗った

マグナム本田(マグナム本田と14人の悪魔 / YAWARA NOW!!)

シンガーソングライトアクター、スティーヴン・セガール研究家。

19XX年、京都府北部に落ちた隕石の落下現場にて発見され施設で育つ。
14歳の時にカート・コバーンに憧れ施設から脱走。紆余曲折を経てシアトリカル・テクノ・ポップ(TTP)バンド「マグナム本田と14人の悪魔を結成。
京都のバンドシーン関係者8割くらいから嫌われている。
https://www.youtube.com/watch?v=1tYuVpXR1qY&feature=youtu.be

3位:沈黙の達人

「あ、コイツふざけだしたな。酒飲みながらか、或いはもっと危険なものを摂取しながら書いているにちがいない。読むのやめよ!」と思った方、少し待っていただきたい。3割くらいはふざけていますが、6割は本気、残りの1割は「私がこの作品を推さねば」という使命感によるものです。本作を入れるために『クリード 炎の宿敵』や『アベンジャーズ エンドゲーム』『サスペリア』などを泣く泣く選外にした私の本気度をわかっていただきたいです。

 

今年ソフト化された本作は2009年の『沈黙の鎮魂歌』以来、実に10年ぶりの「及第点」と言っていいセガール作品でした。内容的には元傭兵で現在は東南アジアで東洋医学の診療所を営むスティーヴン・セガールがいつもの通り、ひょんなことから人をたくさん殺すわけですが、その風貌が完全に『イップマン』であり、普段のセガール拳ではなく軽そうな詠春拳を披露してくれているのです。また「色とりどりの染物が干された風景で色彩豊かな画面にする」という使い古された手法も、セガール作品だと実に新鮮に感じられました。

 

そしてなんとこの作品では一瞬ですが髪の毛をおろしたセガールの姿を確認できるのです。私にとっては「あの有名女優がついに脱いだ!」くらいの衝撃でした。

 

あとエンドロールには物凄いサービスが隠されています。それについてはぜひともあなた自身の目で確かめていただきたいッ!

2位:さらば愛しきアウトロー

ロバート・レッドフォードの俳優引退作品と謳われた本作(本人は若干否定している模様)、クリント・イーストウッドの俳優引退作の『運び屋』と比較せずにはいられないわけですが、イーストウッドが自らの監督による『グラントリノ』で自身の演じてきたキャラクターを総括し、『運び屋』で実に軽やかにひとりの男・夫・父としての「裏イーストウッド史」を提示して俳優引退したのに対し、こちらは若手のデヴィッド・ロウリーによる監督(ロウリーは本作を「思いのたけをこめたレッドフォードへのラブレター」と語っている)で、しかも16ミリフィルム撮影によるニューシネマタッチと、相違点もありつつ、しかしその根底にはマーク・トウェイン的な軽やかなアメリカ文学の潮流が散見されて非常に興味深かったです。

 

そしてなにより『明日に向かって撃て!』のサンダンスキッドがあのまま年齢を重ねたのではないかと思わせられるレッドフォードの子供のような笑顔がたまらなく印象に残りました。

1位:シークレット・ヴォイス

「事故で記憶を失った元国民的歌手を復活させるため、彼女を崇拝する筋金入りのファンが再教育する」というコメディにすらなり得るプロット。しかし監督・脚本はあの『マジカル・ガール』のカルロス・ベルムトなわけで、一筋縄ではいかない「本物と複製の逆転」を二組の母娘を使って巧みに描かれた脚本に翻弄され、観賞後の帰り道ではクラクラする頭を抱えながら鴨川の水面をただぼんやりと小一時間見つめてしまいました。
終盤、主演のエバ・リラッチを固定カメラによる長回しでとらえるシーンがあるのですが、動きもなく、能面のような表情なのに感情のグラデーションが確かに「観える」ことにただただ戦慄しました(音楽の助けもあるのですが、それ以上の「何か」がありました)。

 

この監督を生涯追い続けることを決意するに至る、今年ダントツの一本です。

マグナム本田の選ぶMOVIE OF THE YEAR 2019

 

位:シークレット・ヴォイス

2位:さらば愛しきアウトロー

3位:沈黙の達人

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