COLUMN

金田金太郎のアートウォッチメン!ステートメント01『SOUNDやろうぜ』

この連載は、関西を中心に美術作家の金田金太郎が、開催されているアートな場所を訪れ、ステートメント(アーティストの声明文・展覧会のごあいさつ文)とともに、アーカイブしていくものだ。

ステートメント01:『SOUNDやろうぜ』

場所:in 京都精華大学ギャラリーフロール

1. 音の収穫

“〈音楽の土地〉を耕すにはやはり人間の手と足が適っているのではないか。私たちは、与えられた土地(これは一般的に楽器といって差支えないのだが)を吟味もせずに、それによって収穫をあげようとしている。音を耕すことなしに、真にオリジナルは表われようもない。”

暑さの残る8月の暮れ。左京区岩倉にある京都精華大学のギャラリーフロールで開催されていた『SOUNDやろうぜ』の展覧会ステートメントは、 “音、沈黙と測りあえるほどに” (2000年)での作曲家・武満徹の引用文からはじまっている。

 

本企画は、精華大学にある「音楽」と「ファッション」の2コースからなるポピュラーカルチャー学部の生徒を対象としており、いつしか学内で発足したSOUND野郎ズという音響実験グループが主催するワークショップ「SOUNDやろうぜ」の活動内容を集約したもの。展示はポップな音楽制作にとらわれない、学内外の音響メディアを用いた作家など7名を交えて開催された。

 

SOUND野郎ズ活動の背景には、主要メンバーであるオオシマタクロウの、

“学部では(…中略…)理論やノウハウが学べる一方で、実用性に拠らない自由な発想や既成概念に挑むような態度に触れる機会が少ない”

という問題意識が根底に横たわっているようだ。そのことからも、SOUND野郎ズのワークショップでは、一般に楽器と呼ばれるようなものを使った音楽はほとんど演奏されず、もう少しプリミティブな視点で音を探すところから始まる。例えば、オオシマによるワークショップ映像では、人間が本来口を近づけて歌うマイクとスピーカーを振り子のように近づけて、音をハウリングさせて楽しむ映像が流れていた。

『SOUND野郎ズの活動記録集』(2019)にて、オオシマタクロウによるワークショップ映像資料

2. “掘る”ではなく“耕す”

『SOUND野郎ズの活動記録集』(2019)では、SOUND野郎ズの由来が、かつて宝島社から発刊されていた音楽雑誌「バンドやろうぜ!」であることを知らせるようにして、様々な活動内容の紹介が行われていた。二枚の異なるレコードをツギハギで再構築した『Broken Music』は電源を入れると楽曲がテンポラリーに切り替わる。展覧会に足を運んだ人たちにも、ワークショップで見つけた音を実際に聞いてもらえるようにちょっとした展示の工夫などが光った。

『SOUND野郎ズの活動記録集』(2019)より、雑誌「バンドやろうぜ」
『SOUND野郎ズの活動記録集』(2019)より、『Broken Music』

作品展示では、会場を奥に進んだところにある具志堅裕介による『たいくつ』(2019)や、上田真平の『Mashup Beatles』(2019)のメディア・インスタレーションなどが印象に残った。

 

具志堅氏のディスプレイに映し出されるアニメーション映像と、スピーカーから発せられるステレオ音響の位置関係をズラす作品は、一般にテレビなどで “音が映像の説明的役割を担う” という構図をまるっとひっくりかえしたようなものと言えるし、上田氏の作品は、現代の試聴体験の中で生まれる一種のノイズと言ってもいいだろう。音楽配信サービスから独自のプログラムでディスプレイ上にThe Beatlesの全音源を “一括再生” してゆくプロセスは斬新かつ原初的な取り組みで強く耳に刻まれた。

具志堅裕介『たいくつ』(2019)
上田真平『Mashup Beatles』(2019)

このような作家たちの取り組みを一通り鑑賞していくと、はじめの引用にもあったような、音を「耕す」と言う言葉の響きは、ぼくたちがレコードショップなどでよく耳にするような「ディグる(英語で “掘る” という意味の “Digging” からきている)」という響きといくらか異なっているということがわかる。もとより土地を耕すのは、“スコップ” ではなく“鍬(くわ)” なのだ。スコップは穴を掘ることには適しているが、それは土地(音楽)の中に眠っている “何か” を掘り当てることが目的となる。かわって、鍬は土地(音楽)自体を耕すことで、その土地(音楽)を生きられたものにせしめんとすることが大きく異る。こういったことからも「SOUNDやろうぜ」という言葉は、新開地への開拓者としてではなく、農耕民族的な土地(音楽)の循環を目的とした呼びかけともとれそうだ。SOUND野郎ズは、高度に情報社会が発達した現代で、日々アップデートを繰り返すサービスを前に、“今ここにある土地(音楽)”を省みながら生のある音の収穫を試みている。彼らの活動に今後も期待したい。

会期

2019年8月23日 – 2019年8月31日
11:00 ~ 18:00

会場

京都精華大学ギャラリーフロール
〒606-8588 京都市左京区岩倉木野町137

出展作家

上田真平 / 具志堅裕介 / カズヒデ / Yüiho Umeoka / RAKASU / PROJECT.(落晃子)/ はやぶさ もも / kubotalian / SOUND野郎ズ

関連プログラム

クロージングライブ『We are SOUND YARO\’s』
日時:8月31日(土)14:00~18:00
会場:京都精華大学ギャラリーフロール 2階
入場料:自由料金制

主催

SOUND野郎ズ

イベント公式サイト

https://www.kyoto-seika.ac.jp/fleur/past/2019/0823sound/index.php

WRITER

RECENT POST

COLUMN
金田金太郎のアートウォッチメン!【番外編】
ART
COLUMN
金田金太郎のアートウォッチメン!ステートメント04『DEATH DREAM』
ART
COLUMN
金田金太郎のアートウォッチメン!ステートメント03『Before I Love』
ART
COLUMN
金田金太郎のアートウォッチメン!ステートメント02『タオルがにおう』
ART

LATEST POSTS

INTERVIEW
ただ“おもろい”と思うことをやっていたら、いろんな「無い!!」に気づいた〈トマソンスタジオ〉インタビュー

特集『言葉の力』の企画として本記事では、自らの思想をどのようにして言葉に乗せ発信してきたのかを探る。…

REVIEW
ザ・ディランⅡ

きのうの思い出に別れをつげるんだもの(1972年)

INTERVIEW
どうやって作られているか知るために現場を開く。建築集団「々」野崎将太 インタビュー

COLUMN
【Dig! Dug! Asia!】Vol.6 後編:ジャンルを融合させるパキスタンアーティストたち

「台湾のシーンが熱い」と透明雑誌が日本のインディーシーンを騒がせて、早くも10年近くになるだろうか。…

COLUMN
【Dig! Dug! Asia!】Vol.6 前編:パキスタンの「文化の床」Coke Studio Pakistan

パキスタンの音楽的背景と、その再興に挑み続けるテレビ番組 CokeStudioについて。