REVIEW
河内宙夢&イマジナリーフレンズ
河内宙夢&イマジナリーフレンズ

「去勢されたリビドーがロックンロールになって射精されている」。シンガーソングライター、河内宙夢(コウチヒロム)の歌を端的に称すならばこう言おうか。生まれも育ちも横浜でありながら、昨年京都に上洛してきた彼が、本日休演の岩出拓十郎(Ba)、映像作家でもある小池茅(Dr)と結成した河内宙夢&イマジナリーフレンズ。バンドと同名タイトルとなった本作に溢れているのは、うだつの上がらぬ男の悲喜交々だ。女に惚れたり、振られたり、言われたことを気にしたり、下世話なことを妄想したり……。しかし誰かに想いを捧げるでも、衝動をどこかにぶつけるでも、物語に共感を求めることもなく、歌の所在はどこか空虚でやりきれない。

M2“さよならしたら少し死ぬ”での、君と遊ぶことの楽しみより、さよならした後にくる悲しさが勝ってしまうややこしさ。そこを恐れて「少しだけ飽きたよ」と吐き捨ててしまうカッコ悪さ。M5“裸の夏の夜”のスウィングするグルーヴに乗せて「あなたつまらない男」と言われてしまうトラウマ。ただ他人には伝えられない不安定な情緒を自分自身で処理するような、河内のぬぼっとした歌に溢れる生々しさに胸をかき乱されるのだ。

そんな河内のむき出しの歌を単なるフォークソングにさせないという気概が、岩出拓十郎のプロデュースには感じられる。小池による虫食いだらけのビートが色っぽいM1“好きって”。ローファイサウンドに乗せて唐突にドゥー・ワップなコーラスが入るM3“街に訊く”。おっぱいを軸に物語が進み、中川五郎“25年目のおっぱい”を思い出さずにいられなかった弾き語り主体のM6“おっぱい目当て”では、中盤にはバンド演奏が入り、ダイナミズムをブーストさせている。そしてなんといっても終曲M7“夏が来ている”の後半に渡って繰り広げられるセッション。フリージャズ、ノーウェイブ、スカムなどが入り混じって昇天していくカタルシスったら。岩出がサポートギターを務めるラッキーオールドサン“Rockin’ Rescue”でも見られた、歌から主役を引き継いだギター主体のバンドアンサンブルが別次元に飛躍していく音像において、岩出の卓越した手腕が発揮されている。

ひらく夢などあるじゃなし。『グミ・チョコレート・パイン』(大槻ケンヂ)みたいに、冴えない男子の悶々とした青春物語というには年を取ってしまった。『さくらの唄』(安達哲)や『シガテラ』(古谷実)のように、グロテスクやドラマチックなことは起こらない。ただ自分の弱さを克服したり、肯定したり、時に目を背けてしまうさまを歌い込んだ河内の音楽は、非力ながらにとびきりロマンチックなんだ。いくら過ぎ去っても、叶わなくとも、あの娘の胸に突き刺されと願いながら過ごす日々が描かれている。

河内宙夢&イマジナリーフレンズ『河内宙夢&イマジナリーフレンズ』

 

収録曲

1. 好きって

2. さよならしたら少し死ぬ

3. 街に訊く

4. 子ども

5. 裸の夏の夜

6. おっぱい目当て

7. 夏が来ている

 

価格

2,200円(税込)

 

Twitter 河内宙夢(コウチヒロム)(@romlele21)さん / Twitter

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