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菊しんコーヒー

FOOD 2018.11.15 Written By ケガニ

観光地のひしめく祇園南西の裏通りに、静かにたたずむ喫茶店、菊しんコーヒー。人通りのけっして多くない一角、サイフォン・コーヒーの芳ばしい香りがただよう。セルフリノベーションを施した店内は、レトロな風合いの調度品とあいまって心地よい空間を作り出している。”菊しん”の名はこの場所にもとあったお店の屋号を引き継いだもの。こうしたバランス感覚もあって、お店の雰囲気は歴史と伝統の町、京都によくなじんでいる。

 

この日の取材にあたって注文した人気メニュー、トースト・野菜ジュース・コーヒーのモーニング・セット(500円)はゆったりしたこのお店の朝の雰囲気にぴったりだった。そのほかにも軽食として、カレー(600円)やレモントースト(500円)も人気だという。観光客で混雑する京都のご飯時などに、ぜひ足をのばしていただきたい。

 

2017年5月にオープンして以来、菊しんコーヒーは他メディアでも頻繁に取りあげられる人気店となっている。そこで今回アンテナでは、あえてお店の現状や客観的な情報ではなく、開店に至るまでの個人的な思いにスポットを当てて、お店を切り盛りする東しょう太さんにお話をうかがった。

住所

京都市東山区下弁天町61-11 菊しんアパート101号

営業時間

8:00〜18:00

定休日

日曜定休

TEL

075-525-5322

備考

全席喫煙可、駐輪場無し

“所属すること”のわずらわしさ

──

東さんはこのお店を開くまでに、飲食店での勤務経験があったそうですね。それはどのような場所でしたか。

東しょう太(菊しんコーヒー店主。以下、東)

初めは高校生のときのファミレス、その後大学で和食のお店で働いたことがありました。大学を出たとき、周りにすぐ企業に就職する人はあまり多くなかったんですよね。それでバイトとして仲間とやっていたのが、公〇食堂(※京都の二条駅付近にかつてあった食堂)です。

──

公〇食堂にいるときから、喫茶店をやりたいと考えていたんですか。

そのとき一緒にやっていた人はミュージシャンが多くて、店で音楽イベントをやったりもしていたので、お客さんも自然と音楽関係者やお客さんばかりになっていて。当時は僕も音楽関係で生きていくという希望があったのでそれでもよかったのかもしれませんが、どこかで一般のお客さんを相手にしたいという気持ちもあったように思います。それと、飲食業は好きなんですが、ずっと酔っぱらったお客さんのお世話をするのは嫌やなぁ、とつくづく思って(笑)。それで喫茶店をやりたいな、と考えてたんです。

──

その後、逃現郷(※西陣の喫茶店)で働かれていたんですよね。

そのときはマスターとして入ってましたが、最初から独立しようという気持ちがあって働いていました。雇い主が古い家具や道具が好きな人で、よく天神さんの古物市なんかに行ってました。そういう店の雰囲気も好きでしたし、1人でお店を動かすというのも魅力でしたね。

──

そのときの雰囲気が菊しんコーヒーの土台になっているのかもしれませんね。そのまま働き続けるということは考えなかったんですか。

そのころには独立への想いが形になってきてましたし、所属するとか、誰かのために、というのが自分には合わないなと思ったのもあります。音楽に対しての気持ちもそうでした。バンドでサポートでやるのも苦手ですし、もし売れてレーベルに所属したとしても、仕事としてやるってなると違和感があって。自由にやりたいなと思いました。人と働くことにつきまとういろんなことが煩わしくて、独立すれば上司も同僚もいないのが良いなと。

おいしいコーヒーに愛想はいらない

──

その後スムーズに開店に至ったのでしょうか。

開店しようとなったときには結婚もしてたんですが、僕から奥さんにもちかけました。そのあと一年ぐらいかけて、ずっとネットと足で探して場所を決めました。値段とか街の雰囲気とか。この場所がいいなとなったのがたまたま清水だったという感じです。お店の内装はそのまま残した雰囲気もありますし、カウンター、家具、椅子、棚と、結局は自分でリノベーションしたり作ったりもしました。

──

逃現郷と同じく西陣で、とは考えなかったんですか。

その周りは友達のお店も多かったので避けました。その頃、友達がお店を開いたりしてたんですが、参考にしたりすることはあまりなかったですね。知り合いだけが来る店ではなくて、全然知らないお客さんが来るようなお店にしたいなと。広がりが欲しくて少し距離をとっていたところはあります。

──

お客さんとの距離が近すぎるお店は理想的ではないということですか。

“おいしいコーヒーに愛想はいらない”、と思ってます。愛想がよくないといっても、嫌な感じというわけではなくて。たとえば六曜社地下店(三条河原町)、チタチタ喫茶(堀川丸太町)、喫茶ゴゴ(出町柳)などの喫茶店に憧れています。

自由に生きる手段としての喫茶店

──

お客さんもいろんな人が来られているイメージです。

そう、やっぱりメディアの力もあって観光の方も来ますが、近所の方や、観光客相手に近所で働いている方がモーニングに通ってくれたり、年齢層も若い人からお年寄りまでですね。微妙に街なかからは離れているので、あんまり知り合いは来ないです。

──

なるほど、目論見通りですね。理想にしていた、“自由にやっている”という感じはありますか。

独立してから、ちょっとした事務作業はいろいろとありますけど、いい感じですよ。これを読む方の中に独立を迷っている方がいたら、個人事業主はおすすめしたいです。音楽も奥さん(※安藤明子さん)と一緒に演奏したり、やりたい感じでしてます。コントラバスを買って練習してたりしてて。音楽と喫茶店は“同じ重さ”です。どちらも、楽しく自由に生きていく手段ですね。

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