REPORT

【峯大貴の見たボロフェスタ2018 / Day1】ベランダ / Crispy Camera Club / 折坂悠太 / ボギー / MOROHA

「音楽を止めるな!」

今や日本全国が被災地。一体今年、どれほどのイベントやライヴ、フェスが「音楽を止める」苦渋の決断を強いられたことだろうか。

 

それでも、「音楽を止めるな!」

京都の音楽フェス、ボロフェスタはあえて今年この言葉を旗印とした。惑うことなき今年を代表する映画作品「カメラを止めるな!」からの引用。ベタともいえるほどに直接的なリスペクトだが、手弁当の自主製作で撮影されたこのしこたまにばかばかしい映画が全国を席巻していく痛快な現象が、同じくD.I.Yで16年間フェスを作り続けてきたボロフェスタに強い影響を与えたことが手に取るようにわかる。

 

だから、「音楽を止めるな!」

これほどまでに音楽が無力なのを痛感する年があっただろうか。ただ坂本慎太郎も言ってたじゃないか、「音楽は役に立たない。役に立たないから素晴らしい。役に立たないものが存在できない世界は恐ろしい」って。当たり前の日常が揺らぐかもしれない、そんな今年だからこそ去年と同じ時期に、去年よりも馬鹿やって、音楽を拠り所にして去年よりも遊ぼうとするのだ。もちろん去年と同じ場所、京都で。

 

KBSホールでの開催となって10年目となる今年のボロフェスタにはそんな気概と物語が例年以上に溢れていた。主催者である土龍や飯田仁一郎は当サイト・アンテナを始め事前に様々な媒体でインタビューに答え、オープニングとエンドロールのムービーでも今年にかける思いを表現し、会期中も土龍はパーティーオーガナイザーとして各ステージで出演者を紹介し、そしてトリの登場時には「ボロフェスタとトリを務めるアーティストとの物語をご覧いただきましょう」と付け加えた。まるでボロフェスタに参加してくれる演者さんなら、スタッフなら、そしてお客さんなら、信頼しているから受け取ってほしい、知っといてほしい!というばかりに。

 

そんな今年の3日間の物語を観客として参加した立場から読み解いていこうじゃないか。本稿ではまず1日目の模様をお送りする。

 

開演時間18時。フロアからピエロに扮した主催メンバー、ミノウラヒロキが飛び出し、ホール内に設営された〈キング〉・〈クイーン〉、2つのステージの間のモニュメントに設置された自転車を漕ぎ出す。するとKONCOS“Moning Glow”がかかってオープニングムービーが始まった。今年のオフィシャルTシャツのデザインは古川太一が出がけており、また今年はメインのキングSTAGEを任せられるなどボロフェスタとは強い絆で結ばれたKONCOS。“パーティーは終わらない”と繰り返す歌詞と共に「音楽を止めるな!」の垂れ幕が登場、ボロフェスタの今年の姿勢を高々と掲げ開始を告げた。

ベランダ、Crispy Camera Club

そうして土龍が登場し最初のアクトを紹介する。KBSホール内ではベランダ、そして地下の“街の底STAGE”(eastern youth公認名称)はCrispy Camera Clubという、どちらも土龍が店長を務めるLive House nanoとも縁が深い京都を拠点とするバンド。そしてどちらも今年全国流通盤のリリースを果たした今勢いに乗っている中でのトップ出番の抜擢だが、そんな大役に対してステージで見せた返答には両者の色がしっかり滲み出ていた。

 

ベランダが冒頭に披露したのは“ハイウェイオアシス”。髙島颯心(Vo. / Gt.)と中野鈴子(Ba. / Cho.)による男女二声がじわじわと微熱の情動で満たされていくミディアムチューンだ。途中「やっとボロフェスタ出れました、嬉しいです」とは言いながらもあくまで喜びは控えめに。ラストの“エニウェア”まであくまで自分たちのステージを貫くことが与えられた役割だと解釈したようなどしっとした佇まいは、CHAINS~くるり~スーパーノアと連なってゆく京都のギターロックの遺伝子を引き受けるかのようにも感じられたステージであった。

 

一方でCrispy Camera Clubはミサト(Vo. / Gt.)がボロフェスタTシャツを着用し、ひときわこの環境を味わい楽しもうとする姿勢。リリースされたばかりの『SWAG』からの楽曲を中心にキャッチーなギターロックサウンドと、ミサトのキュートな歌は暑苦しい街の底STAGEをフレッシュな空気に変えていく。ひとたびMCに入れば、稲本裕太(Pale Fruit / サポートGt. )が率先して口を切り、メンバーに話を促してく。なんともこの男、一昨年までホストバンドの一つ花泥棒としてボロフェスタに長らく関わり度々このステージを踏んでいる。2年ぶりとなった感慨も入り混じりながら違った形でカムバックしたその光景は後輩にボロフェスタの流儀を説いているような微笑ましさもあった。

Photo:Yohei Yamamoto

Photo:岡安いつ美

折坂悠太

ホールロビーに設営されたジョーカーSTAGEに舞台を移すと登場したのは折坂悠太。バンドを従えた“合奏”編成での活動も盛んだが、今回は彼の原点ともいえるガットギター弾き語りでの登場だ。今年はアルバム『平成』が各地で話題を呼び、リハーサルから待ち受ける観客も多い中、声の調子を整えるためにうろ覚えで浅川マキの“少年”をぽつぽつ歌うその立ち姿でさえ様になる。バンドサウンドの演者が大半を占めるホールや街の底STAGEの音漏れの影響も受けてしまういわば導線に当たるこのステージだが、一たび“旋毛からつま先”から始まった強烈に突き抜ける声を聴くと、あらゆる外音が遮断された心地になる。それに加えて“みーちゃん”での語りや“芍薬”での啖呵を切ったような口上まで飛び出すその異類の歌に大衆音楽の風雲児とでも言いたくなるじゃないか。ラストの“あさま”では最後にマイクから口を離し、ホーメイの発声のまま深々と例をし、そのまま観客の間を通り抜けて退場していった。それだってこのジョーカーSTAGEという特異な環境と場の空気から感覚的にとった演出であろう、ささやかだが今の折坂悠太の確かな勢いと粋な余韻を感じさせる一幕であった。

 

Photo:岡安いつ美

ボギー

初出演の折坂に対してボロフェスタ超常連である福岡のシンガー、ボギーはもはやジョーカーSTAGEの守護神と言ってもいいだろう。今年も忌野清志郎になりきってフィッシュマンズ“ナイトクルージング”を歌うなど、その完成度とばかばかしさは極上。そして北島三郎“まつり”のボサノバ改作“カーニバル”を経由し、最後はおなじみ海援隊“贈る言葉”。常連客が率先してボギ八先生(=ボギー)の周りを囲んで肩を組みあっての大合唱し、最後には胴上げ。まるで大晦日のガキの使いのように“ボギ八先生をやらないとボロフェスタに来た気がしない”という常連客多数なのも、ボロフェスタとボギー、そして観客の絆あってこその味わえる体験であることを痛感した。

 

Photo:Yohei Yamamoto

MOROHA

そして1日目の最後に登場したのはMOROHA。事前に公開された紹介PVでは「ボロフェスタとMOROHAはライバルです」と表現されるほどの関係性でもって、3年連続の出演、そして初のトリとなる。アフロは「義理チョコみたいな拍手は勘弁してくれ」とヒリヒリとした空気を発する中で“革命”、“俺のがヤバイ”と披露していく。まるで観客一人一人の琴線を引きちぎり、心をぶん殴って回るかのようなアフロの叫びとUKのギターだけが会場に響き、拍手も起こせぬ異様な静けさが広がる。ホール外のジョーカーSTAGEのクリトリック・リスが“Don’t Look Back in Anger”で大合唱を巻き起こしているのが聞こえてくるほどだ。ステージを掌握してもなお、自分たちの立っている場を「“キング”ステージ?だせぇことするな」喝破し、トリを任されたことの感慨なんかねぇよと言わんばかりにただ声を絞り出していく。ただでかいステージに立っている今こそ2013年のアルバムに収録された“勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ”のような曲たちがより現実感を帯びて聴こえてくることは確かだ。最後に演奏された新曲“五文銭”でステンドグラスを開帳させてもなお、己が神殿たれとの如く一瞥もくれず、アンコールもなしにステージを降りていった。

 

彼らも活動初期の2011年からナノボロフェスタに出演し、たたき上げで今回のトリまで躍進してきたが、これまでの感謝を捧げるでもひとまずの到達点ともせず、〈止まってたまるか!〉という決意表明を改めて叩きつけていったようなまさに今年のボロフェスタの熱量を体現するようなステージであった。

 

Photo:岡安いつ美

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