REVIEW
世田谷エトセトラ
Pale Fruit
MUSIC 2018.09.04 Written By 峯 大貴

自身のギターポップを意固地に模索していくノーティ・ボーイ、稲本裕太。京都で花泥棒を結成し、2014年に単身上京。東京で仲間を集めながらバンドOliverに発展し、2017年に『おわかれ/いい子じゃなきゃ』をリリースするもその後まもなく解体。そしてまたもや1人となった彼が今年立ち上げた新プロジェクトがPale Fruit、本作はその初音源となる。

 

収録4曲それぞれに女性シンガーをゲストボーカルに迎えて、後半にはその稲本歌唱verを収録した全8曲。初めて自身の楽曲を他のシンガーに歌を任せて完成させるというプロデューサー的視点と、一方で持ち前のフロントマン気質がせめぎあった結果、どちらも詰め込むというわがままプランが形となった。前者の発想については現在京都のギターポップ・バンドCrispy Camera Clubのギターを務めている経験も少なからず起因しているだろう。

井上花月(Laura day romance)を迎えた「stand by me」は「渚」(2013年)や「back to the future」(2016年)を彷彿とする美しいメロディを爽やかなギターアルペジオが支える楽曲。井上の声によってジュブナイルな青春感がブーストされている。続く「夏のアナーキー」は“アナーキー”という言葉の放つ雰囲気と歌謡曲チックなメロディが少しレトロ、そこに丁寧に言葉を置いていくちーかま(Easycome)のアイドル性を伴った歌唱と音が割れそうなほどのローファイな質感がノスタルジックに響く。「浮気なぼくら」では℃-want you!の屈託のない声が後半につれパンクになっていく曲調をポップの範疇に引き戻し、適度に能天気で常夏な役割を果たしているし、花泥棒時代からライヴでは披露していたオールディーズ・ロック・チューン「ファム・ファタール」もOCHA∞MEによってどこか素朴な仕上りとなっているのが愛らしい。まるで稲本の楽曲の中の世界にこれまでもずっといた女性が次々と眼前に飛び出し、彼からマイクを奪って歌っているかのようなファンタジーで煌びやかなボイス・リレーが続いていくのだ。

 

環境を厳しくすることでグッと糖度が上がる果物のように、これまでため込んでいたアイデアとセンスを爆発させた、狂おしいほどに甘酸っぱくキュートなポップ・チューンたち。とはいえ本作でPale Fruitの全貌解明とはまだいかないだろう、ここからどこへと向かうのかは稲本の次の一手を期待して待とうじゃないか。

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