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きのう、京と、あした 第3回 ‐氷の世界‐

OTHER 2017.12.05 Written By 元原田 ゆいこ

カナート洛北をご存知か。

 

北大路川端の交差点を少し南に行ったところにあるショッピングモールだ。

職場の行き帰りに原付で毎日通るので、時に寄り道をする。

いつもアクセサリーや服を眺めたり、地下のスーパーで買い物をしたり。

特別ここの店がすきだ、というわけではないけれど、ぶらぶらするには丁度いい場所である。

 

カナート洛北ができる前、そこは高野アリーナというスケート場であった。

町内会の冬のイベントとして開催される遠足は、大抵そこでのスケートだった。

ローラースケートや一輪車などがだいすきだったわたしにとっては素晴らしく楽しみな行事で、スケートと聞くと鼻息が荒くなり、その日を指折り数え待った。

現在のようなブームではないものの、当時は伊藤みどりが活躍しており、そのせいもあってかたくさんの人で賑わっていたと記憶している。

スケート場の手前にはマクドナルドがあり、いつもフライドポテトの匂いが充満していた。

みんなワクワクした表情でその前を通り、靴を借りるカウンターへ向かう。

いつも履いている運動靴を脱いで、窮屈で不安定なスケート靴に履き替えると、気分はフィギュアスケーターそのものであった。

リンクは独特の氷の匂いで、休憩するスペースにはお菓子の自販機や焼きおにぎりなどが売っている自販機があって、珍しく、あれはどんな味がするんだろう、と胸がときめいた。

周りのみんなが町内会からの言いつけを守り、転倒時の衝撃に耐えられるようにかぶり慣れていないニット帽をかぶっていることも、なんだかいつもと違うな、と感じる要因の一つであった。

 

技などができるはずもなく、後ろ向きに滑るわけでもなく、ひたすらぐるぐると氷の上を滑り続けるだけ。

それだけなのに、その中でも群を抜いてわたしが一番スケートうまい、という謎の自信に満ち溢れていたわたしは誰よりも何周も滑った。

こわい、とか、あぶない、と言って塀にしがみついて離れないへっぴり腰の女子を横目に見て、かわいこぶりやがって、と内心馬鹿にしていた。

コケている男子を見ては、なんと愚鈍な奴、とも思っていた。

リンクの端っこのほうではスケート教室の人達が美しく滑って、くるっと回る練習をしたりしている。

わたしはどちらかと言うとあっち側の人間だと思っていた。

もしかしてあの教室にスカウトされちゃうんじゃないかしら、とものすごく意識をしてその横でただひたすらに滑り続けた。

自意識とともにスピードはぐんぐん上がる。

ほら、わたしを見て、こんなにじょうず! スカウトするなら今、ほらほら! と、何周も繰り返し滑る。

先生らしき人と何度か目があったような気がしたが、もちろん気のせいで、わたしはただの、町内会でスケートに来て頬を真っ赤にし横目でチラチラとスケート教室を気にしつつ満面の笑みでぐるぐると早いスピードでただただ滑り続ける女児、であった。

 

無言のアピールもむなしく、数時間経過すると集合の声がかかり、みんなであっさりバスに乗って帰る。

寂しさはあれど、靴を脱いだ時の独特の浮遊感に、達成感を覚えたものである。

数年間、その遠足は続いたが、わたしはスカウトされることもなく、静かに高野アリーナは閉鎖した。

ここのところ、ぐっと寒くなった。

スケートも長らくしていないし今年は行ってみたいな、と思いながら今日もカナート洛北の横を通過する。

まあ、おしゃべりでは毎日のように、滑っているんですけどね。

おあとがよろしいようで。

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