REPORT

映画『MOTHER FUCKER』京都みなみ会館 特別先行上映レポート

MUSIC FILM 2017.10.11 Written By 堤 大樹

2017年9月30日(土)、大石規湖(おおいいし・のりこ)監督の手掛けるドキュメンタリー映画『MOTHER FUCKER』の先行上映が京都みなみ会館で行われた。

 

映画は音楽レーベル 「Less Than TV」のミュージシャンたちと、レーベルの代表の谷ぐち順の一家に密着したもの。パンク・ハードコアを愛した人たちの等身大の姿をスクリーンで見ることが出来る。

 

この先行上映イベントは、10月20-22日に京都KBSホールで開催するボロフェスタが協力の元「トーク・ライブ・映画上映」の三分構成となっており、Less Than TVの魅力を感じるのに十分なラインナップとなっていた。

パンクレジェンドムービーとかじゃなくて”今”やっている、現在進行形のパンクを残したかった。

今回の特別先行上映のトークショーでは今作で主演の谷ぐち順、そしてWARHEADのJUN、さらにボロフェスタ主催の飯田仁一郎が司会として登壇。はじめに「実はライブハウス以外であまり話したことがない」という谷ぐち・JUNだったが、トークの雰囲気は非常に和やかだった。話は2人の出会いに始まり、そこからトーク内容は映画について移っていく。

 

『MOTHER FUCKER』へのこだわりのポイントについて、谷ぐちは「ローカルパンクシーンの格好良さっていうのがあると思う。だから現在進行形のパンクを残したかった。パンクレジェンドムービーとかじゃなくて”今”やっているぞ、というところをわかって欲しかった」と説明。

また作品の中で幾度となく現れるライブシーンについても「監督のカメラすごいでしょ」と嬉しそうに笑みをこぼすと、実際に撮影の現場を見ているJUNも「あれは面白い。客席目線でばーんと撮って。わざわざ何台もカメラがあるわけではない」と同意した。映像の多くは客席から撮影されており、時に画面から見切れるライブ映像は演者の汗の匂いまで感じられそうなほど心身ともに近い距離から撮影されていることがわかる。

 

「100のライブを映像の力で120でしているわけじゃない。300くらいのライブを300で撮っている」、「これ見てライブ見に来てくれたらよいなと。ライブと映像とはまた違う」との言葉に、20年にわたってパンクシーンの前線支え続けた谷ぐちの、”ライブ”に対する強い想いを感じた。

その後谷ぐちによる弾き語りライブを経て、満を持して映画が上映された。

好きなことを好きなだけ

『MOTHER FUCKER』というタイトルから、谷ぐち(アーティスト名:FUCKER)を中心に話が展開するのかと思っていたが、本作はその家族三人全員に焦点をあてた作品だった。谷ぐち順、その妻でありLimited Express (has gone?)やニーハオ!でVo.を務めるYUKARI、そしてその息子、共鳴君。映画を通じて映し出されるのは家族の在り方と、表現者としての姿勢や葛藤だ。年齢や性別が違う三人が、生活し、真剣に音楽に取り組む姿が余すところなく映し出されている。

 

印象的なシーンをあげればキリがない本作、個人的に印象的だったシーンをふたつあげておきたい。ひとつめは共鳴君がインフルエンザにかかった中、YUKARIが遠征ライブに向かうシーンだ。ライブへの出発ギリギリまで共鳴君の面倒を見ながら、母親として側を離れることへの葛藤を滲ませるYUKARI。そんな中友人に息子を託しライブへ向かうのだが、道中で音楽について「仕事じゃない、でも趣味じゃない」といった旨の発言をする。ライブでしか彼女を見たことがない自分にとって、このシーンは意外な一面に映った。いつも彼女はそのような葛藤を微塵も感じさせないパワフルなステージングを見せていたから、もうすでに割り切っていると勝手に思っていた。

 

音楽活動をしている人は”趣味”と言われると少し違和感がある人も多いと思う。自身もそのような経験がある。それでも音楽を言い訳にせず、生活も家族も音楽も、全てが大切で、全てに対して真摯に向き合っている人間の生き方を感じられた。表現者であれば、深い共感を得られるシーンではないだろうか。

もうひとつ、この映画の見どころとして共鳴君のバンド、チーターズマニアの初ライブまでの道のりは外せないだろう。両親が現役のバンドマンで、日々ライブハウスへ足を運ぶ共鳴君がバンドやライブへ興味を持つのは自然なことだったはず。そんな彼が理想のメンバー(主に両親のバンド友達)と組んだ夢のバンドがチーターズマニアだ。歳がなん倍も離れたメンバーとバンドを組んだ彼はメンバーの力を借り、時に涙を流しながら、初ライブへと向かっていく。共鳴君を子供扱いしないメンバーたちの人間性も印象的だったし、なによりもよかったのは共鳴君の初ライブの緊張と高揚感が映像からも見て取れたこと。純粋に音楽を楽しむことがどのようなことかを改めて考えさせられた。

 

「好きなことを好きなだけ」

 

映画の終盤で出て来る共鳴君の言葉だが、これを実践して生きている人はどれだけいるんだろうか。好きように生きるのはエネルギーが必要だし、そこに伴う責任は生半可なものではない。そんな人生のスタートに立つ共鳴君と、道中にいる谷ぐち、YUKARIの2人を眺めながら自分の位置を改めて確認したような気持ちになった。

 

けして器用なんかじゃない、それでも彼らの生き方が眩しくて、とても羨ましくなってしまう。きれいな映画だなんて言えないし、温かいなんて言葉でもまとめたくない、良いことも悪いこともフラットに向き合うむき出しのエネルギーが渦巻いていて、「俺も負けねーぞ!」と最後にはなんだか妙な対抗意識が湧き上がった。

 

僕は映画を見ていて共感するシーンが多かった。だけどこの映画に共感するか、そうではないかきっぱり別れる生き方の踏み絵のような作品に感じる。あなたはどちらだろうか。

上映情報

『MOTHER FUCKER』

日時

10月28日(土)- 11月03日(金)

場所

京都みなみ会館

映画公式HP

http://mf-p.net

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