REPORT

【SXSW2017】vol.1 – SXSWとは?

MUSIC FILM ART 2017.05.24 Written By 岡安 いつ美

「SXSWって何?」

SXSWへの取材が決まってから一番言われたことです。改めて説明するとなると……これがとても難しいのです。一言で説明できる程、単純明快なフェスティバルではない。改めてSXSWとはなんなのか、まず初めにおさらいしてみたいと思います。

SXSWとは

SXSWの中心地であるオースティン・コンベンションセンター。すごく簡単にいうと幕張メッセみたいなもの。ここで休憩をしたり、バッジを交換できたり、トレードショーやライブも行なわれている。

SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト:以下SXSW)とは米国はテキサス州オースティンで行われる音楽、映画、ITなどの祭典です。今年は「Music」「Film」「Interactive」に加え、「Comedy」が加わり、大きく4ジャンルのセッションや展示、ライブイベント等がオースティンの街中で行われました。3月10日(金)〜19日(日)までの10日間開催され、参加人数は8万人を超えるといいます。

 

日本の音楽フェスティバルと違うところといえば、SXSWはあくまで『見本市』だということ。日本で音楽や映画などカルチャーのジャンルで『見本市』と言われても馴染みがないので想像しにくいかと思います。SXSWに集まるのは基本的に集まるのインディーミュージシャンや封切り前の映画、ローンチ前のサービスなど。世間一般の人の目に触れる前のものを、世界各国のメディアやオーディエンスが見定めにやってきます。SXSWを通して世界に紹介される音楽や作品、サービスがそれぞれのジャンルの流行として世間を席巻していきました。過去の分かりやすい例で言うと、TwitterがSXSWアワードを受賞し世界的にブレイクしたことや、デビューしたてのノラ・ジョーンズが世界的なアーティストへと飛躍するきっかけになったのもSXSWへの出演があったからというのも有名な話です。

元々SXSWはオースティンのインディーミュージック関係者が「どうしたらもっと売れるようになるのか?」というテーマで始めた小さな勉強会でした。SXSWが始まった1986年当時、Hip Popで成功をおさめたインディーズレーベル・Tommy Boyの社長、Tom Silverman達が始めた「New Music Seminar」というインディーズレーベルのコンベンションがニューヨークで開催されていました。そういったコンベンションを地方都市でも開催すべく始まったのがSXSWで、ニューヨークから見たオースティンが南南西に位置していることから「南南西に進路を取れ」の合言葉をもじったことがSXSWの名前の由来です。

 

イベントがスタート当時は15ステージ、出演者177組だったイベントが(それでも多い!)、30年の時を経て100ステージ以上、出演者が2200を超えるモンスターイベントへと成長を遂げました。しかしこの数字はSXSWが公式に発表している登録数のみ。実際にSXSWに参加するとわかるのですが、各会場にはバッジ(オフィシャルの会場を行き来できるチケット)を所持していない人もたくさんいるし、アンオフィシャルのイベントや会場、出演者も無数にオースティンに集まっています。実際にSXSW期間中にどれだけのアーティストがライブをし、どれだけのお客さんが集まり、どれだけの会場が存在しているのか……誰も把握できていないはず。それこそがSXSWの醍醐味なのです。

路上パフォーマーも多い

近年では教育をテーマにする”SXSWedu”、スタートアップ向けのコンペティションの”SXSW V2V”、Interactive期間中に行われる展覧会”SXSW Trade Show”、環境がテーマの“SXSW eco”、そしてバッジホルダーは全員参加できるゲームの祭典“SXSW Gaming Expo”など期間中にはFestivalのジャンルとして掲げられている4ジャンル以外にもさまざまなイベントが行われていおり、拡大をし続けています。

オースティンだからこそ成り立つSXSW

オースティン市内には東西に伸びる6th Streetという通りがあって、SXSW期間中はその一部が封鎖される。6th Streetには多くオフィシャル会場が立ち並び、イベント期間中は最も人が集まるエリアです。

6th Streetは歩行者天国に
DON’T FORGET TO LEAVE!

6th Streetは商店街のようにバーや飲食店が軒を連ねていて、SXSW期間中はそこにあるお店が窓を全開にして連日深夜2時までライブをしています。(ちなみにオースティンではライブの音出しも深夜2時までというルールがあり、遵守されている)どこのお店もドアや窓を閉めていないので、街中はどこからどんな音がしているかなど、わかるよしもない。本当に日本では想像もできないような空間がオースティンという街には広がっているのです。

奥に見えるお店は大体会場

テキサス州の州都であるオースティンは、古典的なテキサスのイメージであるカウボーイや石油というワードからは程遠く、街中にはビルが立ち並び、とても都会で綺麗な街。というのもオースティンでは半導体などのハイテク産業がとても盛んだからと言えます。ちなみにサムスンの韓国外最大工場があるのも、実はオースティンだったりするのです。

綺麗なビルが立ち並ぶシティ感溢れるオースティン

オースティンのスローガンは「Keep Austin weird」。weirdという言葉は「変な、奇妙な」という意味。オースティンは変であろうぜ、ということを街のスローガンとして掲げているくらいだから、日本で想像もできないこと、世界中で探しても他に類を見ない光景が広がっていても、あまり不思議ではない。そんな異常な状態すらも許容できるのは、たぶんオースティンだから。SXSWが見たこともない、聞いたこともないものを評価するイベントとして育ったのも、そんな精神故ではないでしょうか。さらにはその精神によって生み出されたものが、今や300億円以上の経済効果をオースティンにもたらしているのであれば、それに乗らない手はないはず。

LIVE MUSIC CAPITALとも言われているオースティン

SXSW2017の入場システム

編集長・堤のSXSW道中記でも綴られていましたが、SXSWのオフィシャル会場でライブを見るには基本“バッジ”が必要です。2017年度からこれまで存在していた「Gold badge」がなくなり、バッジは4種類に変更となりました。この変更により例年に比べ「Platinum badge」の値段が下がり、購入を促す結果に。またこれまで各ジャンルのバッジは、それぞれ決められたジャンルのイベントにしか入場することができなかったのですが、今年からは『プライマリー』『セカンダリー』の入場列を作るシステムが導入され、どのジャンルのイベントもひとつのジャンルのバッチで入場できるようになったのが特長です。(ただし優先は特定ジャンルのバッジを持っている人です)

 

これにより、さまざまなジャンルのフェスティバルを楽しむことが可能に。興味があっても、他ジャンルのバッジを買うお金も、プラチナバッジを買う余裕がない……。これまでそんな人たちが多かったと思います。期間が重なっていながらも、相互作用が起こる可能性が低かったSXSWも、これによりさらなる活性化が予想されます。このシステムで編集長・堤はFilm部門の映画を見に行っていました。

 

バッジはそれぞれ入場できるジャンルが異なります。詳細は下記ビデオがわかりやすいので一度ご覧ください。 

SXSWのバッジは当たり前ですが、早く買うほどお得です。今年の価格は以下の通り。最終の通常販売期間に購入すると15万前後します。

 

Badge Type
Through
 Sept. 9
Through
Oct. 24
Through
Nov. 8
Through
Jan. 13
Through
Feb. 10
Walk-up
Platinum
$1,150
$1,250
$1,350
$1,450
$1,550
Interactive
$825
$925
$1,025
$1,125
$1,225
Film
$825
$925
$1,025
$1,125
$1,225
Music
$825
$925
$1,025
$1,125
$1,225

 

The Platinum badge

いわば『All Access Area』のバッジ。すべてのイベント、カンファレンス等に入場が可能です。

 

Interactive・Film・Music

それぞれのジャンルのイベントの『プライマリー』という列から優先的に入場できます。 ジャンル外のイベントには『セカンダリー』という列に並び、『プライマリー』入場者の後に入場ができます。

Musicの期間には面白いほどに日本人が消える — 2017年のSXSWに参加した所感

昔に比べて人が倍増し、6thStreetが姿を変え、SXSWは変わってしまった、という人が私の周りには多くいます。参加者の肌感で商業的な側面が強く出てきている、なんて感想はよく聞きました。毎年のようにオースティンへ向かっていた人たちも、ぱったりと取材をやめている、なんてことも。私が2011年に参加したときに比べると、出演者や会場数は横ばいの印象なのにも関わらず、参加者が異様に増えた印象がありました。Music期間中の6th Streetが人がいすぎて、歩くのも一苦労でした。(2011年はもう少し歩きやすく、移動もしやすかった印象です)実際にここ数年はMusicのバッジを持っていても、行列ゆえに会場入りできず取材できなかったという事象も多発。オースティンの街のサイズは変わらずに、イベントの規模は拡大を続けていればそういったことが起こるのも当然と言えば当然。昔はそんなことなかったのに……という人が多いのも仕方ないのかもしれません。

Music Festivalが一番盛り上がる金曜日の夜22時ごろの6th Street

そして今年特に印象に残っているのが、Interactiveの期間中にとにかくアジア人が多かったこと。コンベンションセンターですれ違うの日本人の数の多さにとても驚かされました。SXSW ASIAが2011年に書いた記事を確認すると、2011年当時の日本人の参加者数は200名ほど。それが今年は日本から1000名を超える参加者がいたという記事もアップされています。AR/VRの台頭からInteractive期間中の日本ブースの人気は高く、今年はSONYPanasonicがSXSWのメインのエリアで大きくブースを構えていたことも話題になりました。日本での認知度や注目度が、Interractive部門で高まってきていることを肌で感じました。

トレードショーの日本ブース。大人気でした
トレードショーは世界各国から出展者が集まります
トレードショーで配布されてたSTELLA ARTOIS。フリービア。

日本人とSXSW Music部門との関わりで言えば、「Japan Night」が有名ではないでしょうか。1996年から約20年間、そうそうたるメンツが、オースティンの地でライブを行ってきました。

http://sxsw-asia.com/history.html

 

今年の出演者はRiRi, Srv.Vinci, ANALOGIX, HANATO CHIRURAN, CHAI, The Walkingsの6組。このうちCHAIはSONYが主催した「グランプリ、いきなり 米国フェス出演オーディション」のグランプリとして出演しました。SXSWの中でも人気を誇るショーケースなのですが、今回アンテナ編集部では取材をしていないので悪しからず。毎年長蛇の列ができて、私が6年前に参加したときはMusicバッジを持っているのにもかかわらず、予約をして入場したほどです。

ただ、Musicの期間になると面白いほどに日本人やアジア人を見かけなくなります。もうぱったりいなくなる。これからがSXSWだというのに、日本人は何処へ……!?と不安になるほど。しかしそれが現実として、私たちに突き付けられました。これが示していることは説明せずともわかるのですが、私たちアンテナのような媒体がSXSWを取り上げる理由がここにあると確信した瞬間でもありました。

この写真は東京スカパラダイスオーケストラのライブ中の1枚。日本人のライブには、ちらほらアジア人の顔が見受けられます。
こちらはフィラデルフィアを拠点に活動するBeach Slangのステージ。アジア人はほぼいませんでした。

より多くの日本人が SXSW Music Festivalに参加する架け橋になりたいと思いました。それはミュージシャンだけでなく、オーディエンスにこそ向けて声高に叫びたい。飽和した日本フェスティバル産業ももちろん楽しいけれども、世界にはもっと刺激的なイベントが待ち構えていることをもっと知ってもらいたい。というかそれを自分の目で確かめてほしい。新たな目標が、今年SXSWに参加して見えてきました。

 

さて次の記事では今年のSXSWで素晴らしいパフォーマンスをしたアーティストに贈られる「Grulke Prize Winners」に選出されたアーティストのフォトレポートをお送りします。

SXSW2017 レポート

堤SXSWへ行く

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番外編:https://stg.antenna-mag.com/post-11404/

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