COLUMN

【ラブレター】第2回:合田有紀

ART 2015.02.18 Written By 山本 アキヒサ

まだなにでもない人となにでもなく

 

今回は、1つの映像を観てください。どこまで届くかわかりませんが、手を延ばしてみます。

【会場】 王余魚沢倶楽部(青森)

【日時】 2013年9月22.23日

【構成】 振付:合田有紀 / 演出・構成:飯名尚人 / 出演:松本成弘 / プロジェクトコーディネーター:水野立子

 

映像の後に付けた情報、振付(ふりつけ)をした合田有紀さんについて書いていきます。話の中心は、『金魚撩乱』。

合田有紀

 

Monochrome Circusダンサー。アーティストのための小スペース「初音館スタジオ」立ち上げに参加。2010 年から2 年間、パフォーマンスグループ「MuDA」のダンサーとしても活動。 合田緑との姉弟デュオ作品「白昼夢」、飯名尚人との共同作品「金魚撩乱」、山中透、Shinya B、Bucciらによる音楽ユニット”Air Vessel”とのライブパフォーマンスなど、様々なアーティストと積極的に活動を行っている。

合田有紀さん(以下:有紀さん)は金魚を飼っているコンテポラリーダンサーです。住んでいる家に金魚がたくさんいて、水槽が部屋の内外にたくさんあります。そんな有紀さんが、その金魚とダンスを踊る。一緒に住んでいる金魚なら一緒にダンスも踊る!わかりやすい!ってなる……でしょうか。

 

言葉で書けば言葉の意味はわかりやすい……しかし、今読んでいるあなたは? たとえばこの公演の1時間ダンスを観て1000円、どうでしょう?多くの人は時間が1時間でも、金額が1000円でも他のものなら払うでしょう。きっと問題は”ダンス”、しかもコンテンポラリーダンス。ダンスそのものの話は全てできないけれど、その中にいる有紀さんを書いていくことでダンスの周縁をナゾってみようかなと。本当になんでもなくダンスも観に行けたらいい。

 

有紀さんは1995年から踊りだします。先にダンスを始めていた姉の影響もあり、高校1年の頃には親に「普通の生き方しません」宣言を行い、出身地である松山のストリートや舞台で踊っていました (今年で20年踊り散らかしてるのか、と書いてて気付きました) 。松山は愛媛県の中の大きい都市で、街は城を中心とした広がりをしており四国文化の発信拠点となっています。でも愛媛県松山市にいては有紀さんは自分が求めるダンスは出来ないと感じてしまい、活動の場を京都に移します。

そしてダンスカンパニー”Monochrome Circus”に籍をおきます。”Monochrome Circus”は、つい先日も『HAIGAFURU』という公演を行うなど精力的に国内外を行き来する京都のコンテポラリーダンスカンパニーです。 有紀さんは”Monochrome Circus”に所属しながらも、踊りは個人に帰属すると感じ、彼自身体を用いた踊りを求め、カンパニー外での活動も行っています。 (今回書きたいのはココ)

 

例えば、今は少し大きくなったパフォーマンスグループ”MuDA”を立ち上げ (現在は、方向性の違いで脱退しています、心の中で応援中) 、またダンスを練習でき発表もできる場で無志向な場として初音館スタジオという場の立ち上げに関わる (現在は、たまに行く) などなど。最近では有紀さんが愛してやまない音楽家”山中透”さん等との”AirVessel” (#1) でライブパフォーマンスを行っています。

 

さて、動画の金魚撩乱にもどります。金魚撩乱は飯名尚人さん (映像作家などが仕事の方) が深く関わっており、連名の共同作品になっています。この作品は、有紀さんが金魚を飼っているという話を飯名さんが聞き (ランチュウを主に産卵させ育てている) 、毎日金魚と踊っていれば何かしらの観せれるものに変わっていくのではないか等の2人の雑談から始まった作品です。この作品を制作していたころの有紀さんは会う度、誰にでも金魚の話をしていました。

 

そんな中、青森県で作品を公演できるということになり準備を始めます (僕はこの辺から見にいった) 。当初有紀さんが振付出演の予定でしたが、直前の京都でのプレ公演前に彼の肺に穴が空き中止。急遽振付のみに変更して、出演を金魚を飼うダンサー友達で映像の小さい方の”松本成弘”に依頼します。 青森県の空港のそばにある廃校になった小学校にて滞在制作を行うのですが、公演会場となったのは学校のプール内。水を抜き、積もった落ち葉も掃除するところから始まります。

 

合田有紀にとって、公演会場を掃除しながら作っていくことは大事なダンスの要素です。ダンスをするとき、足元にホコリが溜まっていると滑ってしまうし、視覚的にも地面がふわふわと輪郭なく見えてしまいます。有紀さんは踊りだした頃から会場の設営や音響釣り込み等をする係 (身長が高いから便利) だったんだろうと思います。ほとんどの学生団体は団員だけで出来るだけの設営を行っています。 (僕は仕事で一緒になった松大ダンス部の手際良さに感動した)

そういう作業を行い、自分で整えた地面に立たないと有紀さんの踊りは出来ません。一度、ただ立ってるだけの振付のダンサーを見て、「あれは大変だ難しい」と有紀さんは言っていました。 ただ立つ、というのは。そこにたどり着くまでが必要なのかなと思います。ストーリーとしてではなく所作として。 (観客に見える物語と言うより、彼自身の日常の生活の延長としての行為に体する納得作業として)

 

そして、そうしないと立つ事すら迷う、合田有紀は弱いダンサーのように写るかもしれない……言葉では。 しかし、彼がただ立ち、広く手を広げると言葉なくともダンスは始まる。空気に抱きしめられる力の強弱、生まれ持つ大きな体の物質的存在感、リズムをたまに外す音感、それらが一度に目前に鑑賞者の体内に入ってきて、異物感を覚える。そんなダンサーです。

 

金魚撩乱で滞在した場所での場をつくっていく過程は、有紀さんのダンス要素を作るのにぴったりだったように感じます。いつか有紀さんが本当に金魚を踊れる時もくるはず。 青森verでの好きなシーンは映像には写ってないのだけれど、最後の金魚の映像が投影されたときプールの奥にある森がスクリーンとなり、木々の中を金魚が泳ぎ闇に入っていく。その時映像を波打たせる演出のため、飼い主の役の有紀さんがプールにエサに見立てた石をぽちょんポチョン落とす。映像の広がりと小さな行為が合わさり、さみしくなる。

 

あれはできない。

 

「ダンサーは少なくとも見た目に労働をしている」 誰かに言われた言葉だ。他の表現より数段、鑑賞者と同じ単位から話が始まる。間違いなく同じ構造の身体を使用している。ダンス公演を観ると体調が良くなったり、悪くなったりする。これは同じ物をどう使うのかという問題でもある。

 

この間有紀さんから聞いた新しい作品の話。また吐きそうになりながらもそれが滑稽なほど届いてしまう。なんだか不思議な夢のような作品になりそう。 また話したい、簡単なバーボンのハイボールでも飲みながら。

 

(#1) ダムタイプの創成期メンバーで作曲家の “山中透 (ヤマナカ・トオル) ”、排他とモダンを混在させるトランペッターの “Bucci (ブッチ) ”、クロス メディアを操る美術家”Shinya B (シンヤ・ビー) ”のユニット「まだ名前はない」が命名され、「Air Vessel (空気室) 」として活動を開始。

「Air Vessel (空気室) featuring ダンサー・合田有紀」は、松山の愛媛県美術館にて、Sold Outのイベントを行ったばかり。山中の作る音の空間、Bucciが奏でる都会的な旋律、Shinya Bの洪水的映像美、合田による肉体アート、そして、それらの融合。

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